アペピ1世

アペピ (Apepi) - 古代エジプト第15王朝のファラオ

アペピ（在位：約紀元前1610年頃 - 1540年頃）は、古代エジプトの第15王朝に属するファラオであり、彼の治世はヒクソスの王たちの中でも特に多くの記録が残ることで知られています。トリノ王名表によると、アペピは約40年間にわたりエジプトを統治しました。この時期、ヒクソスの支配体制は非常に安定しており、デルタ地帯の東部からパレスティナにかけての地域を直接管理していました。それ以外の地域に関しては、現地の統治者に貢納を義務付けることで従属させる形を取っていました。

王朝の状況と統治体制

アペピの治世は、ヒクソスによるエジプト支配が最も強固だった時期と考えられています。この時期、特にテーベ周辺ではヒクソスにより建設された痕跡が見受けられます。また、アペピの名前が刻まれた印章がヌビア遠方で発見されていることからも、彼の影響力が広範囲であったことが伺えます。

アペピが統治する間は、テーベの王国との関係も比較的安定していました。しかし、時間の経過とともに第17王朝が力をつけ始め、アペピの治世後半には彼らの持つ勢力が脅威となることが予想されるようになりました。第19王朝の記録に登場する『アポフィスとセケンエンラーの争い』という説話には、アペピがアメン神殿の聖なる池に住むカバの鳴き声が気に入らず、これを排除するよう求めるシーンが描かれています。この物語では、アペピがテーベへの影響力を再確認させる意図が見えてきます。

戦争とその結果

その後、第17王朝はアペピに対して反旗を翻し、異民族による支配を打破する名目で戦争に突入しました。戦闘は熾烈を極めましたが、最終的には第15王朝が第17王朝に勝利し、セケンエンラーは戦死しました。後の王カーメスはヒクソスの領域にまで侵攻し、一時はアヴァリスを包囲まで行いましたが、彼もまた早世してしまいました。カーメスの後を継いだイアフメス1世は幼少であったため、戦闘は一時中断されました。一方でアペピもこの時期に死去したと考えられています。

アペピの名前と王位継承

アペピという名前には、ネブケペルラー、アケンエンラー、アウセルラーという三つの即位名が付随しています。これらの名前が他の王たちを示しているのか、あるいは単一のアペピ王が複数の即位名を使用したのか、過去には議論の余地がありました。特にアウセルラー・アペピがアケンエンラー・アペピ1世とは異なる人物であるという仮説もあったものの、最近の研究ではこれらの名前は同一人物によるものであるとの見解が強まっています。また、アペピ王の後を継いだ王の名前はカムディであると考えられています。

このように、アペピは古代エジプトの歴史において重要な役割を果たし、その影響は広範囲に及ぶものでした。彼の治世はヒクソスの支配が最も強かった時代として記憶され、後のエジプト史に多くの波及効果を及ぼしました。

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