アボルハサン・バニーサドル

アボルハサン・バニーサドル：イラン革命後の初代大統領、その栄光と挫折

アボルハサン・バニーサドル（1933年3月22日 - 2021年10月9日）は、イラン革命を経て成立したイラン・イスラム共和国の初代大統領です。彼は、革命後の激動期におけるイラン政治の表舞台に立ち、その短い大統領在任期間中に、国内外の複雑な問題に直面しました。

反体制運動から大統領へ

1960年代初頭、バニーサドルは反体制運動に身を投じ、投獄される経験をしました。1963年の暴動で負傷した後、彼はフランスに亡命し、そこでホメイニーと出会い、パフラヴィー朝に対する抵抗運動に参加します。1979年、ホメイニーと共にイランに帰国すると、経済学者としての知識を買われ、暫定蔵相、暫定外相、そして正式な蔵相を歴任しました。

1980年の大統領選挙では、リベラル層や女性からの支持を集め、初代大統領に選出されます。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。

保守派との対立、そして弾劾

バニーサドルの大統領在任期間は、保守派との激しい対立に彩られました。イランアメリカ大使館人質事件におけるアメリカ政府との仲介役は、保守派からの反発を招き、国会（イスラーム協議議会）では保守的なウラマー（聖職者）が多数を占め、バニーサドルと対立しました。ホメイニーとの関係も悪化し、彼は次第に孤立を深めていきました。

1981年6月21日、バニーサドルは議会によって弾劾され、翌日にはそれを受諾。大統領の座を追われることになります。

亡命と晩年

大統領を罷免されたバニーサドルは国外に脱出し、フランスのパリで亡命生活を送りました。彼は晩年まで、執筆活動などを通じてイランの現体制を批判し続けました。

2019年、日本の『東京新聞』のインタビューに応じた際、バニーサドルはホメイニーについて、「亡命中は私と同じ国家像を描いていたが、権力を握ると変わってしまった」と語り、イラン革命は「イスラム法による統治は実現せず」「一部宗教指導者による独裁体制」に陥ったと批判しました。ただし、欧米によるイランへの経済制裁や介入は、イラン国民の経済的困窮の責任転嫁につながるとして反対を表明しています。

2021年10月9日、バニーサドルはパリの病院で88年の生涯を閉じました。

アボルハサン・バニーサドルは、イラン革命という歴史的な転換期において、希望と挫折を経験した象徴的な人物として、記憶されることでしょう。

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