アポロ (競走馬)

アポロ：ケンタッキーダービー優勝馬とその呪い

1879年から1887年にかけて生きたサラブレッド競走馬、アポロ。その名は、ケンタッキーダービーの歴史に深く刻まれ、同時に不思議なジンクスを生み出しました。

アポロは、エルメンドルフファームの所有者、ダニエル・スワイガートによって生産されました。母馬はレベッカティープライスでしたが、父馬はアシュステッドとレバーのどちらか、あるいは両方である可能性があり、記録には食い違いが見られます。ケンタッキー・ライブストック・レコード誌によると、アポロは体高約154センチの、がっしりとした体格で、長く幅広い顔、頑丈な首、高いキ甲、広い胸など、恵まれた体躯をしていたとされています。

2歳時は怪我のため競走に出ることができず、スワイガートはアポロをグリーン・B・モリス調教師とジェームズ・パットンに売却。モリスの管理下で調教を受けたアポロは、3歳となった1882年4月、ニューオーリンズでデビュー。ピックウィックステークスで2着とまずまずの滑り出しを見せると、その後も着実に力をつけ、コットリルステークスで初勝利を挙げました。

そして迎えたケンタッキーダービー。圧倒的な人気を集めていたのはラニーミードでしたが、アポロはブックメーカーのオッズでは11倍という大穴でした。レースでは、ラニーミードが馬群に包まれる不利を受けながらも先頭を走る展開の中、アポロは中団から徐々に順位を上げ、最後の直線でラニーミードを半馬身差で差し切り、大金星を挙げました。

しかし、この勝利には影が差します。ダービーの馬券販売で巨額の利益を得ていたブックメーカーたちが、人気馬ラニーミードの敗北を恐れて、何らかの不正を働いたのではないかという疑惑が浮上したのです。アポロの調教師モリスがギャンブラーであり、ダービーで1万ドルもの儲けがあったこと、さらにラニーミードの馬主であるドワイヤー兄弟と親しかったことが、疑惑に拍車をかけました。しかし、この疑惑はそれ以上の進展を見ることなく、アポロの勝利は覆ることはありませんでした。

その後もアポロは活躍を続け、3歳時には21戦10勝、4歳時には30戦14勝を挙げました。しかし、5歳時には4戦全敗で引退。1887年11月30日、破傷風による開口障害で死亡しました。

アポロのケンタッキーダービー優勝は、後年「アポロの呪い」と呼ばれるジンクスを生み出しました。アポロは2歳戦を経験せずにダービーを制した最初の馬でしたが、その後100年以上もの間、3歳デビューの馬がダービーを制することはありませんでした。多くの3歳デビュー馬がダービーに挑戦するも、ことごとく敗れ続け、アポロの勝利は異例中の異例として長く語り継がれることとなりました。

この呪いは、3歳デビュー馬の経験不足や、多頭数のレースに慣れていないことなどが原因として考えられてきましたが、アポロの時代とは大きく異なるケンタッキーダービーの環境も要因の一つとして挙げられています。しかし、2018年、ジャスティファイが3歳デビューでケンタッキーダービーを制し、136年続いた「アポロの呪い」はついに破られました。

アポロの血統については、父馬がアシュステッドかレバーか、あるいは両方なのか、資料によって異なっているため、確定的な情報は残されていません。母方の血統についても、母父のザカーネルの父馬がプライアムかアルビオンか、といった混乱が見られます。アポロの生涯は、勝利と謎、そして長きにわたるジンクスという、多くの物語を秘めています。

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