アポロンの恋人

郷ひろみ『アポロンの恋人』：筒美京平との最後の協奏曲

1979年4月1日、CBS・ソニーから発売された郷ひろみの11枚目のオリジナルアルバム『アポロンの恋人』。前作『THE BEST 郷ひろみ』から5ヶ月、オリジナルアルバムとしては『Narci-rhythm』から約9ヶ月ぶりのリリースとなりました。このアルバムは、数々のヒット曲を世に送り出した作曲家・筒美京平氏との、重要な節目となる作品として知られています。

筒美京平との軌跡と、その終焉

『アポロンの恋人』は、『アイドルNO.1』以来3作ぶりに筒美京平氏が楽曲提供を行い、全作曲を担当したのは『HIROMIC WORLD』以来5作ぶりでした。しかし、このアルバムをもって、筒美氏は後発シングルを除き、郷ひろみへの楽曲提供から事実上引退することになります。このアルバムが、両者の黄金期を象徴する、そして一つの区切りを告げる作品となったのです。

アルバムの構成と魅力

アルバムには、郷ひろみの代表曲の一つである29thシングル「地上の恋人」をはじめ、数々の魅力的な楽曲が収録されています。それぞれの楽曲は、筒美京平氏の洗練されたメロディーと、阿木燿子氏や小谷夏氏、島武実氏といった作詞家たちの巧みな言葉選びが見事に融合し、郷ひろみの歌声をより一層引き立てています。

中でも注目すべきは、29thシングルのカップリング曲「TATTOO」や30thシングルのカップリング曲「追憶の嵐」など、シングル曲に匹敵するクオリティの高さを誇る楽曲の数々です。これらの曲は、アルバム全体に深みと奥行きを与え、単なるシングルコレクションを超えた、完成度の高い作品に仕上がっています。さらに、編曲には戸塚修氏も参加しており、楽曲の幅を広げ、聴き応えのあるアルバムに彩りを添えています。

収録曲を詳細に見ていきましょう。

追憶の嵐: 阿木燿子作詞、筒美京平作曲・編曲。30thシングルのカップリング曲。
抱かれた花嫁: 阿木燿子作詞、筒美京平作曲・編曲。
DEMON WALK: 島武実作詞、筒美京平作曲・編曲。
TATTOO: 阿木燿子作詞、筒美京平作曲・編曲。29thシングルのカップリング曲。
BLUE FRIDAY: 小谷夏作詞、筒美京平作曲、戸塚修編曲。
アポロン達の午後: 島武美作詞、筒美京平作曲、戸塚修編曲。
D-TYPE: 島武美作詞、筒美京平作曲、戸塚修編曲。
サーカスの少女: 小谷夏作詞、筒美京平作曲・編曲。
地上の恋人: 阿木燿子作詞、筒美京平作曲・編曲。29thシングルのA面曲。
ダイアナ行進曲: 阿木燿子作詞、筒美京平作曲、戸塚修編曲。

これらの楽曲は、郷ひろみの甘い歌声と、筒美京平氏のメロディーが織りなすハーモニーが、70年代後半の日本の音楽シーンを彩ったと言っても過言ではありません。

『アポロンの恋人』の意義

『アポロンの恋人』は、単なるアイドル歌手のアルバムとしてだけでなく、日本の音楽史における重要な作品として位置づけられています。郷ひろみと筒美京平という、日本の音楽界を代表するアーティストの黄金時代を象徴する作品であり、その後の両者のキャリアにも大きな影響を与えたと言えるでしょう。このアルバムは、日本の音楽史を語る上で欠かすことのできない、貴重な一枚なのです。

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