アマウネト

アマウネト

アマウネト（Amaunet、Amonet、Amunetとも）は、古代エジプト神話に登場する太古の女神です。彼女は、世界創造に関わったとされる八柱神「オグドアド」の一員であり、隠された存在としての神アメンの配偶者として崇拝されました。

古代エジプトの中でもかなり古い時代から信仰されており、特にナイル川上流、現代のヘルモポリスにあたる上エジプト第15ノモスでは、アメンと共に世界の始まりを司る創世神として深い尊敬を集めていました。オグドアドは通常、対となる男性神と女性神の四組・計八柱で構成されるとされますが、その具体的な神々の組み合わせについては諸説存在します。中でも、「隠されたもの」を象徴するペアとして、アメンとアマウネトがこの八柱に数えられる場合があります。彼らは、宇宙における大気や呼吸、あるいは根源的なエネルギーを司ると考えられていました。

しかし、ヘルモポリスにおける信仰が広がるにつれて、オグドアドに関する伝承は変化したとされます。一部の資料では、アメンとアマウネトを含むオグドアドがその役割を終えた後、あるいは他の地域へ移った際に、「虚無」を象徴する別の神々に権力を譲ったとも語られています。また、アマウネト自身の地位については、後にアメンの主要な配偶者となった女神ムトに取って代わられた、あるいはムトと同一視されるようになったとする伝承も見られます。

名前の由来

アマウネトという名前は、「女性である隠された者」という意味を持ちます。これは、夫とされるアメン（「隠された者」）という名前の女性形に過ぎないと考えられています。このことから、アマウネトは独立した独自の神格としてよりも、アメンに対応する女性原理や側面を表現するために後に創造された神である可能性も指摘されています。名前が示す「不可視」あるいは「隠された者」という性質は、アメンと共に最も古い時代の神々であったため、その姿は誰も見たことがない、あるいは世界が形作られた後に自らを隠したためであると解釈されました。

神話における役割

アマウネトは、ヘルモポリスで語られた世界の始まりの物語、すなわち創造神話において重要な役割を果たしました。彼女は夫であるアメンと共にオグドアドの一柱として登場し、大気と豊穣を司る存在とされました。

神話によると、彼らオグドアドは、原始の混沌とした水ヌンの中から、最初の陸地となる丘を出現させたと言われています。また、毎日太陽が昇る循環を確立し、ナイル川の水が途絶えることなく流れ続けるように秩序をもたらしました。さらに、太陽神ラーが誕生する場所となる最初の睡蓮を創造したのも彼らであるとされています。オグドアドが世界を統治していた時代は、理想的な「黄金時代」として語り継がれましたが、彼らはその創造の役割を終えると、姿を隠して冥界へと去ったと伝えられています。

時代が下り、特に新王国時代にアメン神が国家の最高神、「神々の王」として全エジプトで広く信仰されるようになると、アマウネトに関する神話もアメンの重要性を強調する形で再解釈されました。この時代の伝承では、強力になったアメン神が各地に赴く際に、牝牛の姿をとったアマウネトの背に乗ったと描かれています。原始の水ヌンは暗く広がる混沌の象徴でしたが、アメンはその水をかき混ぜ、生命と創造へと導く力そのものを表す存在となりました。そして、アマウネトがその背に乗せてアメンを運ぶことで、アメンの創造力が水辺の各地に広がり、最終的には全エジプトの創造神として認識されるようになったと語られています。

しかし、第18王朝の時代になると、テーベの地方神であったムトがアメンの主要な配偶者としてより重要視されるようになります。これに伴い、アマウネトは徐々にその独立した神格としての地位を失い、ムトと同一視される傾向が強まりました。かつてアメンの原始的な配偶者であったアマウネトは、新しい時代のアメン信仰の中心からは外れていきましたが、その名は太古の創世神としてエジプト神話の中に残されています。

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