アマチュア無線の国際運用

アマチュア無線の国際運用とは、各国間の条約や協定に基づいて、免許を受けている国以外でアマチュア無線局を運用することです。この制度を利用することで、海外旅行や滞在中にアマチュア無線を楽しむことができます。

概要

無線局の運用許可は各国の主権に基づいており、法律で厳格に定められています。例えば日本では、原則として外国人に無線局の免許は与えられません。しかし、アマチュア無線はその性質上、外国のアマチュア無線従事者の資格を相互に認め、アマチュア無線局の運用を許可する制度が存在します。同様の制度は多くの国にも存在し、相互協定を結ぶことで、外国でのアマチュア無線運用が可能になります。台湾やパラオのように、相互協定がなくても、その国の主管庁の好意により外国人のアマチュア無線局運用が認められる場合もあります。

日本と相互運用協定を結んでいる国

日本は多く国と相互運用協定を結んでいます。主な国とその条件は以下の通りです。

アメリカ: 日本のアマチュア無線局で許可されている周波数、モード、バンドで、アメリカの最上級資格であるAmateur Extra Classの操作範囲内で運用できます。事前の申請や特別な許可は不要で、コールサインはアメリカの地域別のプリフィックスと"/"を日本のコールサインの前につけたものを使用します。ただし、アメリカのアマチュア無線資格を持っている場合は、日本のアマチュア無線免許に基づく運用は認められません。
カナダ: 運用開始希望日の3ヶ月前までに、必要書類を添えて申請が必要です。
ドイツ: 事前の申請が必要です。
フランス: 3ヶ月以内の滞在であれば許可は不要で、"F/日本のコールサイン/P"の形式でコールサインを使用します。
オーストラリア: 事前申請は不要で、自分の資格がオーストラリアのどの資格に相当するかを確認するだけで運用できます。日本のコールサインの後に"/VK#"（#はオーストラリア国内の地域を示す番号）を付けて運用します。ただし、入国後80日以内の運用に限ります。
韓国: 事前に必要書類を郵送して申請することで、5年間有効なライセンスが発給されます。コールサインは韓国のアマチュア局と同様の形式で、"HL#Z*"が発給されます。
ニュージーランド: 90日以内の滞在であれば許可は不要です。
その他: フィンランド、アイルランド、ペルー、インドネシアとも相互運用協定を結んでいます。

日本と相互運用協定を結んでいないが免許される国

台湾: 日本の無線従事者免許証と無線局免許状に基づいて事前に申請します。申請者は台湾のアマチュア無線連盟（CTARL）に所属している必要があり、免許発給後も台湾の無線従事者免許を持つ者の監督が必要です。日本から持ち込んだ無線機は使用できません。コールサインは従来"BW#/日本のコールサイン"でしたが、近年は"BW/日本のコールサイン"の形式で発給されます。
パラオ: 事前に申請が必要です。手数料の支払額に応じてコールサインを選択できます。
欧州郵便電気通信主管庁会議（CEPT）加盟国: 第一級アマチュア無線技士に限り、事前に総務省からHAREC（Harmonised Amateur Radio Examination Certificate:統一アマチュア無線試験証明書）を取得することで、CEPT勧告T/R61-02を採択した国でアマチュア無線技士としての資格が認められます。ただし、これは資格を認めるものであり、アマチュア無線局の免許は各国の国内法に基づいて別途取得する必要があります。

公海、公空、宇宙空間での運用

公海と公空: 乗っている船舶または航空機の国籍の主管庁の免許が必要です。また、別途船長または機長の許可も必要です。
南極: 南極条約により、いずれの国の領土でもないとみなされるため、いずれの国のアマチュア無線免許も認められます。ただし、各国の南極基地内では、その基地を管轄する国家の主管庁による免許が必要です。
* 宇宙空間: 電波法では、アマチュア衛星関係を除き、宇宙空間におけるアマチュア無線局の運用に関する規定はありません。

DXペディション

DXペディションとは、アマチュア無線で遠距離通信を意味する"DX"と、英語で遠征を意味する"Expedition"を組み合わせた造語です。アマチュア無線局が存在しない、または極端に少ない地域や島などにアマチュア無線家が赴き、遠征運用を行うことを指します。DXペディションも国際運用の一種ですが、環境保護や政治的な理由で立ち入りが制限されている地域や、アマチュア無線の運用を認めていない国などで行われることが多く、通常の国際運用よりも高度な政治的交渉が必要となる場合があります。

国際運用を行う際は、各国の法律や規制を遵守し、安全な運用を心がけましょう。

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