アマチュア衛星

アマチュア衛星とは

アマチュア衛星とは、政府機関や商業企業ではなく、アマチュア無線愛好家や大学の研究室などが独自に開発・製作する通信衛星のことです。これらの衛星は、アマチュア無線の周波数帯を使用して通信を行います。

宇宙開発黎明期の1961年に打ち上げられた「オスカー1号」を皮切りに、これまでに約70機ものアマチュア衛星が打ち上げられ、宇宙におけるアマチュア無線の可能性を広げてきました。

アマチュア衛星の製作団体

アマチュア衛星の企画・製作は、様々な独立した団体によって行われています。これらの団体を統括する組織はありませんが、互いに技術協力を行ったり、打ち上げ後の追跡管制で協力体制を敷くことが多いのが特徴です。

これらの団体の多くは「AMSAT」の名を冠しており、1969年に設立された米国の団体AMSAT（Radio Amateur Satellite Corporation）と連携して、各国のアマチュア衛星計画を推進しています。例えば、ドイツではAMSAT-DL、イギリスではAMSAT-UK、日本ではJAMSATが活動しています。

衛星の製作は、必ずしも「アマチュアの手作り」に限定されません。英国のサレー大学が技術を商業化したUoSATシリーズや、東大阪宇宙開発協同組合が開発した「まいど1号」のように、JAXAと連携して基礎開発を行う例もあります。しかし、多くのアマチュア衛星は、非営利団体やグループが寄付とボランティアによって製作されています。

米国では、衛星の打ち上げや実験、目標達成を競うARLISSというイベントも開催されています。

アマチュア衛星の名称

アマチュア衛星には、「アマチュア無線搭載人工衛星」（Orbiting Satellite Carrying Amateur Radio）にちなんで、「OSCAR（オスカー）」という名称と連番が付けられることが慣例となっています。これは、国際協力によって作られたアマチュア衛星としてのアイデンティティを示すものです。

ソ連時代には「RS-xx号」という独自の名称が用いられていましたが、1991年のRS-14号はAMSAT-OSCAR-21という名称も使用されました。

国際アマチュア無線連合（IARU）とAMSAT-NAが定めたルールでは、「オスカー」の名称と連番は、各アマチュア衛星の保有団体の依頼を受けてAMSAT-NAが付与し、軌道に投入されて動作が確認されたもののみに与えられます。

アマチュア衛星の用途は、アマチュア無線通信が主ですが、地球観測や天体観測などの科学衛星としての利用も行われています。

アマチュア衛星との通信方法

低軌道衛星を利用したアマチュア衛星との無線通信は、以下の手順で行います。

1. アップリンク周波数で電波を発射できる送信機と、アマチュア局の免許（無線従事者免許証、無線局免許状）を用意します。
2. ウェブサイトや軌道計算ソフトで、衛星が可視となる時刻と方角を確認します。1回のパスで通信できる時間は数分から10数分程度です。
3. アップリンクとダウンリンクで異なる周波数帯を使用します。自局の信号が正常に中継されているか確認するため、アップリンクと同時にダウンリンクの周波数を受信できる設備が望ましいです。受信時にはハウリングを防ぐため、ヘッドホンを使用します。
4. アンテナを衛星の方向に向け、衛星からダウンリンクされた他局のCQ呼び出しに応答するか、自局からCQ呼び出しを行います。
5. ドップラー効果を補正するため、衛星が近づく際にはアップリンク周波数をわずかに低く、遠ざかる際にはわずかに高くします。

交信範囲は、自局と相手局が同時に衛星を可視できる範囲に限られるため、日本であれば距離1000〜2000km程度の近隣諸国までとなります。

国際宇宙ステーション（ISS）に設置されたアマチュア局との交信も、アマチュア衛星とほぼ同様の方法で行うことができます。

アップリンク・ダウンリンク周波数で不法無線局が電波を出している場合、衛星通信に重大な障害が発生する可能性があります。水平偏波アンテナを使用することで混信を軽減できる場合がありますが、完全に防止することは困難です。

アマチュア衛星通信は、技術的な知識や無線設備の準備が必要ですが、宇宙を身近に感じられる貴重な機会を提供してくれます。

関連情報

JAMSAT
AMSAT-NA

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