アマドコロ

アマドコロ（甘野老）

アマドコロ（学名: Polygonatum odoratum var. pluriflorum）は、キジカクシ科アマドコロ属に分類される多年草です。広義には P. odoratum 全体を指します。春に白い花を咲かせ、食用や薬用として古くから人々に利用されてきました。

名称の由来

和名のアマドコロは、その根茎がヤマノイモ科のトコロに似ており、甘味があることに由来します。「トコロ」の語源ははっきりしていませんが、多肉質の地下茎を持つ植物に使われることが多いようです。

地方によっては、ジョウシュウアマドコロ、キツネノチョウチン、アマナ（甘菜）、イズイ、エミグサ、カラスユリ、キツネノマクラ、チョウチンバナ、ナルコ、ヘビスズラン、ヘビユリなど、様々な別名で呼ばれています。中国植物名は玉竹（ぎょくちく）です。

花言葉は「元気を出して」「心の痛みがわかる人」です。

分布と生育環境

アマドコロは、ヨーロッパから東アジアにかけて広く分布しています。日本では、北海道から九州にかけて自生し、原野、丘陵、山麓などの日当たりの良い草原や林縁に見られます。庭先や鉢植えで栽培されることもあります。

形態と生態

アマドコロは多年草で、地下には横に這う多肉質の地下茎があります。草丈は30 - 80cmで、変種のオオアマドコロでは1mにもなります。茎は少し斜めに立ち、4 - 6本の稜角があります。葉は互生し、楕円形から長楕円形で、ササの葉に似ています。

花期は春から初夏（4 - 5月）で、葉の付け根から細長い筒状の白い花を垂れ下げて咲かせます。果実は液果で、夏から秋にかけて暗緑色から青黒色に熟します。

種子は楕円形または卵形で茶褐色をしています。低温にさらされることで休眠が打破され、発芽には二度の冬越しが必要です。

利用

アマドコロは、観賞用、食用、薬用として利用されます。

観賞用

初夏に下垂する花が美しいため、庭に植えて観賞されます。斑入りの園芸品種も存在します。

食用

若芽、花、地下茎が食用になります。春の若芽や地下茎は甘味があり、山菜として親しまれています。若芽は天ぷら、和え物、おひたし、煮物などに、花は酢の物や寒天寄せなどに利用されます。根茎は甘辛く煮たり、天ぷらやフライにすると美味しくいただけます。

薬用

根茎は薬用にも利用されます。滋養強壮、消炎作用があるとされ、漢方では玉竹（ぎょくちく）という生薬として用いられます。また、打ち身や捻挫の薬としても利用されます。

類似の植物との見分け方

アマドコロに似た植物として、ナルコユリ、オオナルコユリ、ユキザサ、ホウチャクソウなどがあります。

ナルコユリとの違いは、アマドコロの茎が角張っているのに対し、ナルコユリの茎は円柱形であること、アマドコロの花が1 - 2個ずつ付くのに対し、ナルコユリは3個以上ずつ付くことなどです。

ホウチャクソウは有毒植物で、若芽に毒性があります。ホウチャクソウは摘むと悪臭がするため、臭いを確認することが重要です。

まとめ

アマドコロは、美しい花を咲かせ、食用や薬用にもなる有用な植物です。山野で見かけた際には、その姿をじっくり観察し、様々な利用法を試してみてはいかがでしょうか。ただし、食用にする際は、類似の有毒植物との区別に十分注意してください。

もう一度検索