アマドコロ属

アマドコロ属（Polygonatum）

アマドコロ属（学名: Polygonatum）は、キジカクシ科（Asparagaceae）に属する植物のグループです。ナルコユリ属とも呼ばれます。

名称の由来

学名 Polygonatum は、「多くの膝」を意味し、長く連なる地下茎の形状に由来します。英語では、Solomon's seal（ソロモンの印章）と総称されます。この名前の由来は諸説ありますが、地下茎の断面が印章に似ているという説が有力です。

分布

アマドコロ属は、北半球の亜熱帯地域から温帯地域、さらには極地にかけて広く分布しています。

特徴

アマドコロ属の葉の付き方（葉序）は、互生、輪生、対生が混在している点が特徴的です。近縁の植物では互生が一般的なのに対し、アマドコロ属内では多様な葉序が見られます。具体的には、節（sect.）ごとに異なり、sect. Verticillata ではこれらの葉序が混在し、sect. Sibirica では輪生、sect. Polygonatum では互生となります。祖先形は互生であると考えられていますが、アマドコロ属の祖先形が何であるかは明確にはわかっていません。

分類

アマドコロ属は、キジカクシ科の中で最大の属であり、約57種から63種が含まれています。そのうち20種は中国固有種です。

節（Section）の分類

Tamura (1993) の分類
sect. Verticillata
sect. Polygonatum

系統的には、sect. Verticillata は原始的な側系統であり、sect. Polygonatum は進化した多系統群です。sect. Polygonatum は、ほとんどの種を含む大きな系統と、少なくとも1種 Polygonatum fanchetii からなる小さな系統に分かれます。
Meng (2014) の分類
Tamura (1993)の分類を基に、sect. Verticillata から sect. Sibirica を分離し、Polygonatum fanchetii を適切な節に移動させることで、3つの単系統節に整理しました。
sect. Verticillata
sect. Sibirica
sect. Polygonatum

列（Series）の分類

Tang (1978) は、アマドコロ属を7つの列（series）に分類しました。この分類を Tamura (1993) の節の分類と対応させると、sect. Verticillata が5つの列、sect. Polygonatum が2つの列に対応します。ただし、Tang (1978) の分類でも、ser. Verticillata と ser. Alternfolia は単系統ではありません。

近縁の属

アマドコロ属に近縁な属としては、Disporopsis属とHeteropolygonatum属があります。

主な種

Meng (2014) による3つの節を基本とし、Tang (1978) の列に対応する単系統群に細分化して主な種を紹介します。

sect. Verticillata（sect. Sibirica を除く）

ser. Verticillata の一部と ser. Kingiana
Polygonatum stenophyllum（クルマバナルコユリ）
Polygonatum kingianum
ser. Alternfolia の一部（以前は sect. Polygonatum の一部）
Polygonatum franchetii
ser. Oppositifolia
Polygonatum griffithii
Polygonatum cathcartii
Polygonatum oppositifolium
ser. Verticillata の一部
Polygonatum verticillatum
ser. Punctata
Polygonatum punctatum
ser. Verticillata の一部と ser. Hookeriana
Polygonatum cirrhifolium
Polygonatum hirtellum
Polygonatum prattii
Polygonatum hookeri
Polygonatum zanlanscianense
Polygonatum roseum

sect. Sibirica（以前は sect. Verticillata の一部）

ser. Verticillata の一部
Polygonatum sibiricum（カギクルマバナルコユリ）

sect. Polygonatum

ser. Alternfolia の一部と ser. Bracteata
Polygonatum cyrtonema
Polygonatum arisanense（アリサンアマドコロ）
Polygonatum multiflorum
Polygonatum acuminatifolium（ヒナヨウラク）
Polygonatum falcatum（ナルコユリ）
Polygonatum odoratum（アマドコロ）
Polygonatum inflatum（ミドリヨウラク）
Polygonatum biflorum
Polygonatum pubescens
Polygonatum desoulavyi
Polygonatum filipes
Polygonatum lasianthum（ミヤマナルコユリ）
Polygonatum involucratum（ワニグチソウ）
Polygonatum humile（ヒメイズイ）

参考文献

Tamura (1993)
Meng (2014)
* Tang (1978)

もう一度検索