アマン・アンドム

アマン・ミカエル・アンドム：エチオピア激動の時代を駆け抜けた軍人

アマン・ミカエル・アンドム（1924年6月21日 - 1974年11月23日）は、エチオピアの軍人であり政治家。エチオピア帝国崩壊後、最初の国家元首として、激動の時代を駆け抜けました。陸軍のクーデターによって皇帝ハイレ・セラシエ1世が退位した1974年9月12日から、同年11月23日に暗殺されるまでの短い期間、権力を掌握しました。彼の公的な肩書きは、臨時軍事行政評議会議長であり、同評議会はデルグ（Derg）として知られていました。

生涯

エリトリア・ハマセンのツァゼガで生まれたアマン・アンドムは、第3師団長として、東部国境におけるソマリア軍の侵攻を幾度となく撃退し、「砂漠の獅子」という異名を得ました。しかし、1964年には独断でソマリアへの侵攻を試みたため、皇帝の勅令によって解任され、その後はエチオピア議会で政治活動に参加しました。1974年2月から3月にかけて、彼は軍事政権の将校団と接触を持ち、7月には参謀長に就任。軍事政権が皇帝を宮殿から排除し、第4師団本部に幽閉した後、アマンは事実上の大統領職である議長に就任しました。この時期に「臨時軍事行政評議会」(PMAC)という名称も定められました。

議長就任後

アマンは議長就任後、デルグの主要幹部と3つの主要な問題で対立しました。第一に、デルグの規模について、アマンは肥大化しすぎていると考え、規模の縮小を主張しました。第二に、エリトリア解放戦線(ELF)の扱いについて意見が分かれました。第三に、デルグ当局によって拘束されていた旧貴族や前政権の関係者らの処遇についてでした。アマンが2名の元首相を含む旧貴族やその親類などの処刑を拒否したことが、デルグ主要幹部との関係を悪化させる要因となりました。

アマンがエリトリア人であったことも、デルグ主要幹部との対立の一因となりました。彼はELFとの平和的交渉による解決を望んでいましたが、デルグ主要幹部の多くは軍事力による断固とした粉砕を主張しました。アマンは2度にわたりエリトリアへの個人的な訪問を行い、帝政の崩壊が古い慣行の破壊であり、国家統一と進歩、そしてエリトリアの平和と繁栄のために政府は尽力すること、また軍がエリトリア人に対して行った犯罪に関する調査と処罰を行う旨を宣言しました。

この頃、デルグ内部では反主流派の粛清の準備が進められていました。当局は、近衛師団、空軍、陸軍工兵隊に反主流派の存在を疑っており、特に陸軍工兵隊を警戒していました。10月7日には、デルグの部隊が工兵隊の駐屯地を襲撃し、5人を殺害、複数人を負傷させ、残った者を軟禁状態に置きました。

アマンはこれを受けて、デルグの外に支援を求めました。当時、彼はデルグ以外の陸軍や国民の間で非常に人気がありました。11月15日には、デルグ寄りではなかった全ての軍部隊に対してメッセージを送っています。17日、デルグの総会議の中で、副議長メンギスツ・ハイレ・マリアムは5,000人規模のエリトリア派兵と6人の旧政府高官の処刑を提案しましたが、アマンはこれを拒否し、さらに公職全てを退く旨を宣言しました。その後、密かに第3師団の将兵を含む支持者らと連絡を取り合いつつ自宅にて隠居しましたが、メンギスツはアマンと支持者らの連絡を傍受していました。

粛清とその後

アマンは、彼の逮捕に向かったデルグ側の部隊との戦闘で死亡しました。戦死したのか、それとも自決したのかは明らかになっていません。同日夜、デルグ当局は処刑を予定していた皇族・前閣僚・政府高官などの政治犯らをメネリク刑務所からアカキ中央刑務所まで護送した後、同刑務所内で全員を処刑しました。アマンは有能であったものの、デルグの政権運営にとって不都合な存在になっていたと言えるでしょう。

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