ハイレ・セラシエ1世

ハイレ・セラシエ1世の生涯と影響

ハイレ・セラシエ1世（Haile Selassie I）は、1892年にエチオピア南部のショア地方に貴族の子として生まれました。彼は古代イスラエルの王ソロモンとシバの女王の子孫であると主張しており、その出自は彼の皇帝としての地位を強化しました。

幼少期と摂政時代

若い頃、ハイレ・セラシエ1世は地方の州知事を歴任し、記憶力に優れていました。1916年のクーデター後、メネリク2世の娘である女帝ザウディトゥの皇太子・摂政として実権を握り、国際連盟へのエチオピアの加盟などを推進しました。彼は当時の大国にアプローチするため、アメリカ合衆国と日本に接近しました。

皇帝としての即位と近代化政策

1930年に皇帝として即位し、1931年にはエチオピア初の成文憲法を制定。しかしこの憲法は実態としては絶対主義的であり、社会体制の改革には至りませんでした。政府は官僚制度を強化し、特に教育に力を入れましたが、十分な教育施設が整備されず、識字率の改善には失敗しました。また、農民の土地の大半は地主に奪われ、生産の75%を奪われるという厳しい現実がありました。近代化政策は伝統との衝突を生み、反発を招きました。

帝国主義との戦い

1935年、イタリアがエチオピアに侵攻し、第二次エチオピア戦争が勃発しました。国際連盟はエチオピアの訴えを受け入れましたが、十分な支援を行わず、結局エチオピア軍は壊滅的な敗北を喫しました。ハイレ・セラシエ1世は亡命を余儀なくされ、ロンドンに移りました。1936年には国際連盟の総会で演説し、エチオピアの立場を強く訴えました。

専制と経済危機

戦後、ハイレ・セラシエ1世は朝鮮戦争にエチオピア軍を派遣しましたが、国内経済は改善されず、国民生活は悪化していきました。連続するストライキやデモ、そして飢饉も影響し、人民の反発が高まりました。文民の苦境や宮殿での贅沢な生活が表面化し、皇帝の威信は大きく損なわれました。

退位と死

1974年、クーデターが発生し、エチオピア革命が実行されました。ハイレ・セラシエ1世は軟禁状態になり、その後、廃位されました。彼は1975年に死亡しましたが、その死因については様々な説があります。

歴史的影響と評価

死後、ハイレ・セラシエ1世の遺骨は長らく行方不明となっていましたが、1992年に発見され、アディスアベバの聖三者大聖堂に埋葬されました。また、彼はラスタファリ運動の象徴としても称えられ、ジャマイカなどで広く崇拝されています。

彼の在位中、国際的な問題に対抗し、アフリカの統一を目指す動きを始めた点は、高く評価されています。また、日本とも深い関係を築くなど、多くの国際交流を実現しました。ハイレ・セラシエ1世の生涯は、近代エチオピアの歴史における変革の象徴として語り継がれています。

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