メンギスツ・ハイレ・マリアム

メンギスツ・ハイレ・マリアム（1937年5月27日 - ）は、エチオピアの政治家、軍人であり、エチオピア革命を指導した人物です。彼は、マルクス＝レーニン主義に基づく社会主義国家建設を目指し、エチオピア人民民主共和国の初代大統領に就任しました。また、エチオピア労働者党書記長やアフリカ統一機構議長も歴任しました。

生い立ちと軍歴

メンギスツは、エチオピア南部のカファ州の貧しい家庭に生まれました。彼の出身部族は明確ではありませんが、クロ語またはその近縁のコンタ語を話す少数部族の出身であるという説が有力です。ホレタ陸軍士官学校を卒業後、アディスアベバやアスマラの部隊で昇進し、ハラールの部隊に配属されました。また、アメリカやイギリスにも留学経験があります。

エチオピア革命と権力掌握

1974年9月、エチオピア革命が勃発し、メンギスツは臨時軍事行政評議会（PMAC）の第1副議長に就任しました。その後、穏健派と急進派の対立が激化する中、メンギスツは急進派を率い、穏健派の指導者たちを粛清しました。11月22日には、穏健派のアマン・アンドムPMAC議長らを殺害し、実権を掌握しました。1975年には、廃位されていたハイレ・セラシエ1世も殺害しました。

社会主義政権と内戦、そして亡命

1977年、メンギスツはクーデターを成功させ、PMAC議長に就任し、社会主義軍事政権を発足させました。ソ連やキューバなど東側諸国の支援を受け、エチオピアの社会主義化を急進的に進めましたが、その過程でソマリアとのオガデン戦争、エリトリア独立戦争、飢餓の拡大などが発生し、100万人もの難民を生み出しました。1984年には、エチオピア労働者党が結成され、メンギスツは書記長に選出されました。1987年には、文民統治政権に移行しましたが、メンギスツは大統領として引き続き権力を保持しました。

国内では、ティグレ人民解放戦線（TPLF）を中心とするエチオピア人民革命民主戦線（EPRDF）が発足し、内戦が激化しました。1991年2月以降、EPRDFの攻勢が強まり、同年5月、メンギスツはジンバブエに亡命しました。その後、EPRDFが首都アディスアベバを制圧し、メンギスツ政権は崩壊しました。

亡命後の裁判と現在の状況

2006年12月12日、エチオピア高等裁判所は、ジェノサイドと人道に対する罪でメンギスツに終身刑を宣告しました。しかし、ジンバブエ政府はメンギスツの身柄を保護し、エチオピアへの引き渡しを拒否しました。2008年にはエチオピア最高裁判所がメンギスツに死刑を宣告しましたが、彼は現在もジンバブエに滞在し、保護を受けています。

評価と影響

メンギスツは、その独裁的な統治と粛清によって多くの人々を苦しめた人物として、広く批判されています。彼が主導した社会主義政策は、エチオピアの経済を混乱させ、飢餓と難民問題を深刻化させました。一方で、彼の政権下で進められた土地改革や教育改革は、一定の成果を上げたという評価もあります。しかし、彼の統治は、エチオピア社会に深い傷跡を残したことは否めません。

メンギスツの生涯は、独裁政治がもたらす悲劇と、社会主義革命の複雑さを象徴するものとして、歴史に刻まれています。彼の行動は、現代においても、権力と人道、革命と平和について、深く考えさせられる教訓を与え続けています。

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