アミグダリン

アミグダリンとは：その危険性と食品利用の実態

アミグダリン（英: amygdalin）は、ウメ、アンズ、モモ、ビワなどバラ科サクラ属植物の種子に多く含まれる青酸配糖体の一種です。未成熟な果実や葉、樹皮にも微量に含まれています。俗に「がんに効く」などと言われ、サプリメント等に配合されることがありますが、科学的な根拠はありません。

アミグダリンの危険性

アミグダリン自体は無毒ですが、経口摂取すると体内で分解され、シアン化水素（青酸）を発生させます。シアン化水素は少量であれば安全に分解されますが、ある程度の量を摂取すると、嘔吐、顔面紅潮、下痢、頭痛などの中毒症状を引き起こし、多量に摂取すれば意識混濁、昏睡などを生じ、死に至ることもあります。

アメリカ食品医薬品局（FDA）は、アミグダリンを「癌治療に何の効果も示さない非常に毒性の高い製品」とみなし、アメリカでの販売を禁止しています。

アミグダリンが含まれる食品

アミグダリンを含む食品や加工品は、アーモンド、杏仁豆腐、ビワ酒、枇杷茶、カリン漬けなど多岐にわたります。これらの食品は、アミグダリン分解産物であるベンズアルデヒドの独特な芳香を利用しています。

種子に注意

熟した果肉や加工品を通常量摂取する場合には安全ですが、種子にはアミグダリンが高濃度で含まれているため注意が必要です。生の種子を粉末にした食品の中には、小さじ1杯程度の摂取量で安全なシアン化水素量を超えるものもあります。

厚生労働省は、高濃度のシアン化合物（アミグダリンやプルナシン）が含まれたビワの種子の粉末が発見されたことを受け、天然にシアン化合物を含有する食品と加工品について、10ppmを超えたものは食品衛生法違反とすることを通知しました。

アミグダリンと健康

古くからビワやアンズなどの葉や種子は、生薬として咳止めなどに使用されてきましたが、これはアミグダリンの毒性を少量利用したものです。薬効を期待して利用する場合は、必ず医療従事者に相談し、自己判断での摂取は避けるようにしてください。

アミグダリンが「癌に効く」とされることがありますが、米国国立癌研究所(NCI)は、癌への治療や改善、延命に対して効果がないことを指摘しています。むしろ、青酸中毒を引き起こし死に至る恐れがあります。

また、アミグダリンはかつてビタミンB17として扱われたことがありますが、現在では否定されています。健康食品（サプリメント）などに配合されることがありますが、必須栄養素ではないため、ビタミンの定義から外れます。

厚生労働省・国民生活センターの注意喚起

厚生労働省は、アンズやビワなどの種子を利用したレシピの掲載について注意喚起を行っています。家庭で生のアンズやビワの仁から杏仁豆腐を作ると、数分煮るだけではシアン化物が全て除去されないことが報告されています。

国民生活センターは、ビワやウメを原材料とした健康茶やウメエキスのシアン化合物濃度を測定し、品質管理の徹底を事業者へ、指導の徹底を行政機関へ要望しました。また消費者に対し、利用の必要性をよく考え、製造者等がシアン化合物の濃度を調べているかを確認し、一度に多量に摂取しないようアドバイスしています。

まとめ

アミグダリンは、適切に摂取すれば問題ありませんが、過剰摂取には注意が必要です。特に、種子を原材料とする食品については、製造者等の情報を確認し、摂取量に注意するようにしましょう。また、「癌に効く」などの不確かな情報に惑わされず、科学的な根拠に基づいた情報を参考にすることが大切です。

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