サクラ属

サクラ属（Cerasus）とは

サクラ属（学名：Cerasus Mill.）は、バラ目バラ科サクラ亜科に属する植物のグループです。しかし、サクラの分類は、国や時代によって異なり、サクラを独立した属（Cerasus）とする考え方と、スモモ属（Prunus）に含める考え方があります。

分類方法の違い

サクラを独立した属（Cerasus）とする分類は、主にロシア、中国、そして1992年以降の日本で主流です。この分類では、ヤマザクラやセイヨウミザクラなど、約100種のサクラがサクラ属（Cerasus）に分類されます。この分類を狭義のサクラ属と呼ぶこともあります。

一方、西欧や北米では、サクラをスモモ、モモ、ウメなどと共にスモモ属（Prunus）に分類するのが一般的です。この分類では、約400種がスモモ属に含まれ、広義のサクラ属と呼ばれることもあります。

分類が異なる理由

この分類の違いは、それぞれの地域におけるサクラ類の多様性に起因すると考えられています。サクラ類の多いロシアや中国では、サクラを独立した属として扱う方が分類しやすい一方、サクラ類の少ない西欧や北米では、他の果樹とまとめて分類する方が合理的だったと考えられます。

日本では、かつては西欧や北米の分類基準に合わせてサクラをスモモ属として分類していましたが、1992年に発表された東京大学の大場秀章氏の論文以降、実態に合ったサクラ属（Cerasus）表記が主流になりました。

サクラ属とスモモ属の分類

スモモ属（Prunus）による分類

西欧や北米で主流のスモモ属（Prunus）による分類では、サクラの他に、ウメ、モモ、プラム、アーモンドなどの果樹や花木も含まれます。スモモ属は、さらに以下の亜属に分けられます。

モモ亜属 (Subgenus Amygdalus)
アーモンド (Prunus dulcis)
モモ (Prunus persica)
ス[[モモ亜属]] (Subgenus Prunus)
プルーン (Prunus domestica)
ウメ (Prunus mume)
スモモ (Prunus salicina)
スピノサスモモ (Prunus spinosa)
アンズ (Prunus vulgaris)
サクラ亜属 (Subgenus Cerasus)
チョウジザクラ (Prunus apetala)
セイヨウミザクラ (Prunus avium)
カンヒザクラ (Prunus campanulata)
クマノザクラ (Prunus kumanoensis)
スミミザクラ (Prunus cerasus)
マメザクラ (Prunus incisa)
エドヒガン (Prunus itosakura)
ヤマザクラ (Prunus jamasakura)
カスミザクラ (Prunus leveilleana)
ミヤマザクラ (Prunus maximowiczii)
タカネザクラ (Prunus nipponica)
チシマザクラ (Prunus nipponica var. kurilensis)
カラミザクラ (Prunus pseudocerasus)
オオヤマザクラ (Prunus sargentii)
オオシマザクラ (Prunus speciosa)
モチヅキザクラ (Prunus ×mochizukiana)
エイシュウザクラ (Prunus ×nudiflora)
ソメイヨシノ (Prunus ×yedoensis 'Somei-yoshino')
ニワウメ亜属 (Subgenus Lithocerasus)
ユスラウメ (Prunus tomentosa)
ニワウメ (Prunus japonica)
dwarf cherries, (Prunus pumila)
ウワミズザクラ亜属 (Subgenus Padus)
イヌザクラ (Prunus buergeriana)
ウワミズザクラ (Prunus grayana)
エゾノウワミズザクラ (Prunus padus)
シウリザクラ (Prunus ssiori)
バクチノキ亜属 (Subgenus Laurocerasus)
セイヨウバクチノキ (Prunus laurocerasus)
リンボク (Prunus spinulosa)
バクチノキ (Prunus zippeliana)

これらの亜属は、それぞれ特徴的な花や実を持ち、植物学的な観点からも興味深いグループです。

種の定義

ここで注意すべきは、分類学上の「種（species）」とは、野生に自生する種のみを指すということです。種（species）の雑種や変種（variety）、栽培品種（cultivar）は、種の数には含まれません。

今後の分類について

スモモ属（Prunus）の分類は、サクラ亜属以外は単系統性が疑わしく、将来的な再編が予想されています。今後の研究によって、より正確で合理的な分類体系が確立されることが期待されます。

まとめ

サクラ属の分類は、その複雑さから、様々な議論があります。この解説が、サクラの分類について理解を深める一助となれば幸いです。

参考文献

勝木 俊雄『桜』岩波書店〈岩波新書〉、2015年。ISBN 978-4-00-431534-6。
* 吉田雅夫, 京谷英寿, 安野正純「Prunus属の種間交雑に関する研究-1-交配親和性について」『育種学雑誌』第25巻1号、1975年、p17-23。

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