アミントレ・ファンファーニ

アミントレ・ファンファーニ（Amintore Fanfani、1908年2月6日 - 1999年11月20日）は、戦後イタリアの政治を語る上で欠かせない主要人物であり、経済学者としても知られています。

トスカーナ州の小都市、ピエーヴェ・サント・ステーファノに生まれたファンファーニは、ミラノのサクロ・クオーレ・カトリック大学で経済学を専攻しました。卒業後は経済学者として大学に残り、母校やローマ大学で教鞭を執り、経済史や経済学史の分野で研究を行いました。

政治の世界に足を踏み入れたのは、第二次世界大戦中の1942年です。カトリック系の組織に属していた彼は、後のイタリア共和国を率いることになるアルチーデ・デ・ガスペリらと共に、キリスト教民主主義（DC）党の結党に加わりました。戦後、1946年には新たな憲法を制定するための議会（憲法制定議会）の議員に選出され、国家再建の一翼を担います。そして、翌1947年にはデ・ガスペリ内閣で労働・社会保障大臣として初めて入閣を果たし、政治家としてのキャリアを本格的にスタートさせました。

ファンファーニは、DC党内で頭角を現し、幾度となく党の要職や政府の主要ポストを歴任しました。1954年にはデ・ガスペリの後任としてDC党書記長（党首に相当）に就任し、党の改革と強化に取り組みました。この職は1959年まで務め、党内における指導的地位を確立します。

首相としては計6期にわたり政権を担いました。最初の首相就任は1954年1月でしたが、下院で信任を得られず、わずか23日間で退陣するというイタリア共和国史上最短の記録を残しています。その後、1958年には再び首相に就任し、今回はイタリア民主社会党との連立によって議会の信任を得ましたが、権力集中を目指す姿勢が党内保守派の反発を招き、翌1959年に辞任に追い込まれました。その後も1960年代に2期、1980年代にも2期首相を務めるなど、その政治生命は長く続きました。特に1980年代には、政局が不安定化する中で、短期間ながらも政権を率いて事態の収拾にあたる役割を担いました。

首相や党書記長のほか、外務大臣や元老院（上院）議長（3度）なども務め、さらには国連総会議長も歴任するなど、国内外で幅広い影響力を行使しました。冷戦下の複雑な国際情勢やイタリア国内の政治的混乱期において、ファンファーニは常にその中心にいました。

しかし、1990年代初頭の「タンジェントポリ」（イタリア語で「賄賂の街」の意）と呼ばれる大規模な汚職摘発事件は、彼が長年支えたDC党に壊滅的な打撃を与えました。ファンファーニは党の衰退を目の当たりにし、1994年のDC党解党を見届けました。

1999年11月20日、91歳でローマの病院で死去。その死に際しては国葬が執り行われました。

ファンファーニに対する歴史的な評価は複雑で、多岐にわたります。冷戦下のイタリアにおいて、政治的な安定を維持し、経済発展に貢献したその手腕を高く評価する意見がある一方で、ジュリオ・アンドレオッティのような他の長期政権経験者と同様に、権力の座に長く留まり続けたことに対する批判も根強く存在します。また、政治家としての現役時代には、マフィアを含む犯罪組織との不適切な関係が度々噂されたこともあり、その政治的な遺産に対する評価は今日でも分かれているのが実情です。

ファンファーニは、激動の20世紀後半イタリアにおいて、その政治手腕と影響力をもって国の針路に大きな影響を与えた政治家でした。彼のキャリアは、戦後イタリア政治史の縮図とも言えます。

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