アムピマコス

アムピマコス（古希: Ἀμφίμαχος, Amphimachos）は、古代ギリシアの伝承に現れる同名の人物を指す言葉です。特に有名なのは以下の五名ですが、他にも何人か存在します。

エーレクトリュオーンの子

ミュケーナイの王エーレクトリュオーンと妻アナクソーの間に生まれた息子の一人です。ゴルゴポノス、ピューロノモスなど多くの兄弟や、異母兄弟リキュムニオスがいました。彼は、メーストールの領地を要求してきたプテレラーオスの息子たちとの戦いで命を落としました。

クテアトスの子

エーリス地方の双子の英雄モリオネの一人、クテアトスと、オーレノス王デクサメノスの娘テーロニケーの間に生まれました。同じくモリオネであるエウリュトスの子タルピオスと共に、スパルタ王テュンダレオースの娘ヘレネーの求婚者の一人となりました。その後、タルピオス、ポリュクセイノス、ディオーレスと並んで、エーリス地方から40隻（ヒュギーヌスによれば10隻）の軍船を率いてトロイア戦争へと赴きました。

トロイア戦争中の激戦の中、トロイア軍がギリシア軍の防壁を破って陣内へ侵入した際に、アムピマコスは戦闘に加わろうと駆けつけましたが、敵将ヘクトールによって討たれてしまいました。ヘクトールはアムピマコスの首から兜を剥ぎ取ろうとしましたが、大アイアースの攻撃を受けて退き、その間にアテーナイの将スティキオスとメネステウスがアムピマコスの亡骸をギリシア軍の陣営へと運び去りました。この直前にヘクトールに討たれたトロイアの武将イムブリオスの遺体を大アイアースと小アイアースが回収しており、その報復として小アイアースはイムブリオスの首を斬り落とし、ヘクトールの足元に投げつけました。別の伝承では、パトロクロスが戦死した後の戦闘で、ニーレウスと共にアイネイアースに討たれたとも語られています。

ノミーオーンの子

カーリア地方の王ノミーオーンの息子であり、ナステースという兄弟がいました。ナステースと共にカーリア地方の軍勢を指揮し、トロイアを助けるために遠征しました。彼は年若い娘のように黄金の装飾品で身を飾って戦場に臨みましたが、それが彼を敵の攻撃から守ることはありませんでした。スカマンドロス川での戦闘中、アキレウスによって討ち取られました。クレータのディクテュスの伝えるところでは、パリスとデーイポスの策略によって命を落としたアキレウスの遺体が小アイアースとステネロスによって運び去られる際、アムピマコスもまた、デュマースの子アシオスや兄弟のナステースと共に、小アイアースによって斃されたとされています。

プリアモスの子

トロイアの王プリアモスの多くの息子の一人として知られています。プリュギアのダレースの記録によれば、トロイアの援軍であったメムノーンやペンテシレイアが斃された後、トロイア人たちは今後の戦略について議論を行いました。アンテーノール、アイネイアース、ポリュダマースらが和平を主張する中、アムピマコスは断固として戦争の継続を訴えました。プリアモス王も同様の考えを持ち、アムピマコスに賛同して戦争継続を決定し、集会を終えました。その後、アムピマコスはプリアモスと共に王宮に戻りましたが、そこで王から和平を唱える者たちを排除すべきだと告げられました。さらに、和平派を晩餐に招き、その席で彼らを暗殺するという計画の実行を任され、アムピマコスもこれを受け入れました。しかし、同じ日、アンテーノール、ポリュダマース、ウーカレゴーン、ドローンらは密かに会合を開き、プリアモスへの裏切りを企てました。彼らはプリアモスの招集に応じる前に、ポリュダマースをギリシア陣営へ送り込み、ギリシア軍をイーリオス城内へ引き入れる手引きをすることで、戦争に終止符を打ったため、アムピマコスの計画は実行されませんでした。

ポリュクセイノスの子

エーリス地方の王の一人であるポリュクセイノスの息子で、ディーオスの父にあたります。パウサニアースの記述によれば、ポリュクセイノスはトロイア戦争から無事帰還した後、アムピマコスという息子を授かりました。息子の名は、トロイア戦争で共に戦ったエーリスの武将アムピマコス（クテアトスの子）の名に因んで付けられたとされています。

その他のアムピマコス

これら主要な人物の他にも、伝承には同名のアムピマコスが幾人か登場します。

トロイアの木馬に乗り込み、城内に侵入したギリシアの武将の一人。
オデュッセウスの妻ペーネロペーに求婚した多くの者たちの一人。ドゥーリキオンの出身。
* ペーネロペーの求婚者の一人。こちらはオデュッセウスの故郷であるイタケー島の出身とされています。

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