アメリカミズアブ

アメリカミズアブ

アメリカミズアブ（亜米利加水虻、学名: Hermetia illucens）は、ハエ目に属するミズアブ科の昆虫です。この種の幼虫は、汚物から発生する奇妙な生態から「フェニックスワーム」と称されています。以下に、その特徴や生態、人間との関わりについて詳しく説明します。

形態

成虫

成虫の体長はおおよそ15から20ミリメートルで、全体の色は黒色をしています。翅は半透明で黒色であり、触角は比較的長いのが特徴です。腹部には白い斑点があり、胸部の側面も細かい白毛で縁取られています。また、複眼はメタリックグリーンにメタリックパープルの楕円形が多数並んでいる独特の模様を持っています。

幼虫

幼虫は体長20から28ミリメートルで、やや淡い褐色をしていて、蛆虫状の形状をしています。一般的に、幼虫は汚物や腐敗した有機物を食べるため、家庭内の生ごみやコンポストなどから発生しやすいです。

生態

分布

北アメリカと中南米が原産地であり、近年は人間の移動に伴い、世界中にその分布を広げています。日本には1950年代に侵入し、各地で繁殖が確認されています。

生息環境

成虫は主に5月から9月にかけて出現し、特に夏から秋に多く見られます。成虫は食物を取らないため、腐敗した有機物に集まり、主に繁殖のためにその周辺に現れます。

人間との関わり

アメリカミズアブは、特に水洗式トイレが普及する以前は、便所の周囲で見かけることが多かったため「便所バチ」とも呼ばれていました。一方で、英語圏では「フェニックスワーム」とも称され、この名称は汚物から虫が発生する様子や、研究者の運命的なエピソードに由来しています。

アメリカミズアブの幼虫は、温暖な環境での大量養殖が可能で、栄養価も非常に高いため、世界中の養鶏や養殖魚の代替飼料として注目されています。特にケニアでは、家庭の生ごみを与えて育てた幼虫が家畜や魚の飼料として利用されています。幼虫のカルシウムとリンの比率は、ペットの健全な成長に理想的な値を示すため、アメリカでは様々な名称で流通しています。これには「Calci worm」や「Phoenix worm」、「Repti worm」などが含まれます。

さらに、大阪府立環境農林総合研究所では、アメリカミズアブの幼虫を養鶏や魚の飼料に使用し、排泄物と残渣を堆肥として活用する技術が確立されています。

このように、アメリカミズアブは生態系において重要な役割を果たし、また人間社会においてもその利用が進んでいます。生物学的な食物連鎖での位置づけや、廃棄物処理における新たな可能性を秘めているこの昆虫は、ますますその存在意義が強まっています。また、アメリカミズアブは、外見が日本の在来種であるコウカアブに似ていますが、触角が長い点で異なるため、識別が可能です。

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