アメリカン・アニマルズ

アメリカン・アニマルズ：衝動と後悔の物語

『アメリカン・アニマルズ』（2018年）は、退屈な日常に刺激を求めた大学生4人が、1200万ドル相当の貴重な書籍を盗み出すという、衝撃的な実話を描いたクライム映画です。ドキュメンタリー出身のバート・レイトン監督による長編劇映画デビュー作であり、エヴァン・ピーターズやバリー・コーガンといった実力派俳優が出演しています。

映画は、ケンタッキー州のトランスシルバニア大学を舞台に、ウォーレン、スペンサー、チャズ、エリックという4人の大学生を取り上げます。彼らは、刺激のない大学生活に不満を抱き、特別な経験を求めていました。そんなある日、彼らは大学の図書館に所蔵されている、ジョン・ジェームズ・オーデュボンの貴重な画集「アメリカの鳥類」の存在を知ります。

当初は軽い気持ちで始まった計画でしたが、彼らは次第に本格的な犯行へと突き進んでいきます。入念な計画を立て、特殊メイクで老人に変装するなど、綿密な準備を進めます。しかし、計画実行の際には予想外の事態が次々と発生し、彼らの計画は思わぬ方向へと進んでいきます。

映画の見どころは、緻密に練られた計画と、その計画実行におけるハプニングの対比です。観客は、彼らの若さゆえの無謀さと、犯行後の罪悪感や葛藤をリアルに感じ取ることができます。また、映画には、事件の当事者である4人の大学生と、関係者へのインタビュー映像が挿入されており、フィクションとノンフィクションが巧みに融合しています。

キャスト陣も、それぞれのキャラクターを見事に演じきっています。エヴァン・ピーターズ演じるウォーレンは、破天荒ながらもリーダーシップを発揮する人物像を描き、バリー・コーガン演じるスペンサーは、繊細で臆病な一面を表現しています。ブレイク・ジェンナー演じるチャズは短気な筋肉オタク、ジャレッド・アブラハムソン演じるエリックは内気なインテリとして、それぞれの個性が際立っています。さらに、事件に関わった人物、図書館司書や古物商なども登場し、事件の全貌をより深く理解させてくれます。

特筆すべきは、事件に関わった人物の多くが、本人役で出演している点です。ウォーレン、スペンサー、チャズ、エリックの4人だけでなく、彼らの両親や関係者も映画に出演し、事件当時の状況や現在の心境を語っています。これらのインタビューは、映画にリアリティを与え、観客の感情を揺さぶる重要な要素となっています。

映画の評価は非常に高く、Rotten Tomatoesでは89%の高評価を得ています。批評家からも高い評価を得ており、そのクオリティは折り紙付きです。Metacriticでも68点と、高い評価を獲得しています。

『アメリカン・アニマルズ』は、若者の衝動と、その結果としての罪悪感、そして後悔をリアルに描いた、傑作クライム映画です。ドキュメンタリーとフィクションが融合した独特の演出、そして、当事者たちの生の声は、観客に忘れられない衝撃と感動を与えてくれるでしょう。単なるクライム映画としてだけでなく、人間の心の闇と再生を描いた深いドラマとしても、高く評価できる作品です。興味のある方は、ぜひ一度鑑賞してみてください。

もう一度検索