アメリカン・プログレ・ハード

アメリカン・プログレ・ハード

アメリカン・プログレ・ハードは、1970年代のアメリカにおいて形成されたロック音楽のスタイルで、一般的には「プログレ・ハード」と呼ばれることもあります。このジャンルは、音楽評論家の渋谷陽一が自身のラジオ番組でボストンの作品を紹介する際に初めて言及したとされ、その言葉から広まった背景があります。

このスタイルは、明確な定義は存在しないものの、名前が示す通り、プログレッシブ・ロックとハードロックの要素が融合した音楽を指します。具体的には、イギリスのプログレッシブ・ロックが持つクラシック音楽的な繊細さと、アメリカ特有のブルースやコーラスワークを活かした大らかなロックサウンドが取り入れられています。

アメリカン・プログレ・ハードの特徴の一つは、電子楽器の使用や変拍子の導入にあります。シンセサイザーやメロトロンなどの楽器を駆使し、高度な演奏技術を発揮した楽曲が多く見られます。1970年代中頃からは特にその人気が高まり、多くのバンドが商業的にも成功を収めていきました。

このジャンルの代表的なバンドには、ボストン、カンサス、ジャーニー、スティクス、フォリナー、REOスピードワゴン、TOTO、クラック・ザ・スカイなどがいます。これらのバンドは、それぞれ独自のスタイルを持ちながらも、共通してアメリカン・プログレ・ハードの要素を巧みに取り入れた楽曲を展開しました。

しかしながら、時代の変化と共にこのジャンルの音楽性も変わっていきました。1980年代に入ると、全体的なサウンドがポップ化し、アメリカン・プログレ・ハードのスタイルは次第にスタジアム・ロックへと発展していきました。スタジアム・ロックの盛り上がりにより、より多くの人々がこのジャンルの音楽に触れることとなり、その後のロック音楽シーンにさまざまな影響を与えました。

新たな世代のアーティストたちも、このスタイルからの影響を受けつつ新しい音楽を創造しています。プログレッシブ・ロックやハードロック、さらにはプログレッシブ・メタル、AOR（アダルト・オリエンテッド・ロック）、スタジアム・ロックといった関連ジャンルとも深い関わりが見られ、アメリカン・プログレ・ハードはロックの進化の中で重要な役割を果たしてきたと言えるでしょう。

このように、アメリカン・プログレ・ハードは、1970年代のロックシーンを彩ったスタイルであり、それは多様な音楽的影響と高い演奏技術によって成り立っています。その影響は今なお続いており、次世代のアーティストたちに受け継がれています。

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