メロトロン

メロトロン (Mellotron)

メロトロンは、1960年代にアナログ再生方式を用いて音声を再生する楽器として登場しました。その発明の背景には、アメリカの音楽家ハリー・チェンバリンが開発したチェンバリンに起源があります。この楽器はイギリスのブラッドレィ兄弟によって改良され、メロトロンとして市場に登場しました。

メロトロンの誕生過程

ハリー・チェンバリンが制作した「Chamberlin Rhythmate」は、テープ音源を使用するリズム楽器の先駆けで、これがメロトロンの前身です。初期のモデルでは、演奏者が鍵盤を押すことで、録音された弦楽器や管楽器の音色を再生することが可能でした。さらに、伴奏パターンや効果音が収録されたテープも存在します。

メロトロンの製造はチェンバリンの会社では困難であったため、イギリスに持ち込まれ、ブラッドレィ兄弟が中心となっての開発が進められました。1962年に発売された最初のモデルは「Mk I/II」で、18種類の音色を収録し、伴奏用の鍵盤が付属していたことや、音色のバリエーションが豊富だったことが特徴です。

1960年代後半には、ビートルズやムーディー・ブルースなどのアーティストによってその魅力が広まり、メロトロンは多くの音楽ジャンル、特にロックとジャズにおいて重要な役割を果たしました。

メロトロンの社会的影響

1970年代にはポリフォニックシンセサイザーの普及とともに、メロトロンのユーザーは次第に減少していきました。一方、イギリスのミュージシャン・ユニオンは1967年にメロトロンの使用が演奏者の仕事を奪うと声明を発表し、これが引き金となっています。これに伴い、メロトロニクス社は音作りに協力したミュージシャンへの補償を行う必要が生じました。

メロトロンの構造

メロトロンは鍵盤と再生ヘッドの間にセットされた音源テープを使用します。鍵盤を押すことでテープが再生ヘッドに押し付けられ、音が出ます。このユニークなメカニズムは、音程の不安定さや多数のノイズを伴う音質を強調することになりました。しかし、その独特なサウンドが逆に音楽シーンでの個性として評価されることになりました。

演奏者と使用例

メロトロンが初めてロック音楽で使用されたのは、グレアム・ボンド・オーガニゼーションの楽曲とされています。以降、ビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」や、キング・クリムゾンの「クリムゾン・キングの宮殿」など、多くの名曲で使われるようになりました。特に、プログレッシブ・ロックのアーティストたちから支持を受け、多くの楽曲にメロトロンの音色が取り入れられるようになりました。

現在のメロトロン

1980年代以降、他の新しい楽器やシンセサイザーが台頭する中、メロトロンの人気は一時的に下火になりましたが、近年ではメロトロンの製造が再開され、新型モデルやデジタル版も登場しています。今では多くのミュージシャンがその音色の独特さを求め、メロトロンを活用しています。特に「M4000」というモデルは、現代のスタイルで再設計されたものです。

メロトロンの存在は、音楽制作の中で重要な位置を占め続けており、そのユニークなサウンドが新しい世代のアーティストに引き継がれています。音源の持つ特異性は、感情豊かな表現力を生むための鍵となっているのです。

もう一度検索