アメリカ・ナチ党

アメリカ・ナチ党について

アメリカ・ナチ党（American Nazi Party、略称ANP）は、アメリカ合衆国における極右の政治団体です。1959年に設立されたこの党は、バージニア州アーリントンに本部を構えていました。

結成と背景

1959年3月8日、元アメリカ海軍中佐のジョージ・リンカーン・ロックウェルが、自由経済国家社会主義世界連合（WUFENS）を立ち上げ、その後同年12月に党名をアメリカ・ナチ党に変更しました。この党は、アドルフ・ヒトラーのナチ党の基本理念と政策に強く影響され、党旗や制服もそのスタイルを模倣したものとなっていました。ロックウェルはバージニア州アーリントンの未亡人から邸宅を購入し、「ストームトルーパー・バラック」と命名して党本部としました。

当初はナチズムや白人至上主義を前面に出し、非合法路線を採っていましたが、1960年代後半には地方選挙に候補者を立てるなど、合法路線に転換しました。1967年1月1日には党名を「国家社会主義白人党」（NSWPP）に改称し、一部の過激な党員を追放しました。この新名称は全米黒人地位向上協会（NAACP）に対抗意識を持ったものとされます。

全盛期とロックウェルの暗殺

ANPは1966年から1967年にかけて最も勢いを増し、ロックウェルは『PLAYBOY』のインタビューを受けるほどの著名人となり、約500人の支持者を持つに至りました。しかし、1967年6月28日、ロックウェルは自宅近くで銃撃され、続いて8月25日にはコインランドリーで胸に命中する銃弾を受け、命を落としました。彼を襲った犯人は、元党員のジョン・パトラーで、ロックウェルに「マルクス主義者」として追放された人物でした。

分裂と消滅

ロックウェルの死後、副党首のマティアス・コールが後継者となりました。彼はより過激な立場を取り、ハーケンクロイツを再び使用するなどして白人至上主義を強調しました。しかし、1970年代に入ると内部で思想の対立が生じ、数人の幹部がそれぞれ新しい党を設立しました。フランク・コーリンはアメリカ国家社会党を結成し、ウィリアム・ルーサー・ピアースはナショナル・アライアンスを立ち上げました。

このような分裂に加え、コールは神秘主義に傾倒し、政治から宗教活動へと重点を移していきました。1979年にはNSWPPが活動に参加し、ノースカロライナ州で行われたデモを襲撃するといった事件も起こりましたが、最終的にはこの団体も衰退し、ANPは消滅していきました。

継承組織とその後

ロックウェルの死後、「アメリカ・ナチ党」と名乗る様々なグループが設立されました。その中には、特に反コール派が中心となったものや、他の様々な団体が含まれていました。スハイダもまた自らの「アメリカ・ナチ党」を設立し、他団体への批判を行いながら活動を続けました。

しかし、これらの後継組織にはロックウェルの意志を引き継ぐものは少なく、ANPが持っていた資産はコールが設立したニュー・オーダーに引き継がれることとなりました。ANPはアメリカの極右政治団体の中でも特異な存在となり、今日のアメリカにおける白人至上主義運動に影響を与えています。

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