アメリカ大陸のウェールズ移民

ウェールズ人移民の歴史

アメリカ大陸におけるウェールズ人移民は、特異な開拓地をいくつか設立したことから、その移民の痕跡は今も色濃く残っています。ウェールズ人による新たな植民地建設は、イギリスの植民地化の流れの一部として捉えることができます。ただし、それらの移民の中にはウェールズ人だけの集落を形成しようとした試みもあったため、ここではその歴史を振り返ってみましょう。

マドック伝説

伝説によれば、1170年にウェールズの王子マドックがアメリカ大陸に最初に足を踏み入れたと言われています。彼はグウィネズの王子であり、王位継承の混乱を避けるために、植民者たちと共に西へ旅立ったとされます。彼らは最終的にミシシッピ川近くに上陸し、植民地を築いたとのこと。しかし、その後彼は先住民の中に溶け込み、伝説は16世紀に広まっていきました。この話は、その後のイギリスの北アメリカ領有権主張を強化するためにも利用されましたが、現代の多くの学者は実際には事実に基づかないと考えています。

北アメリカにおけるウェールズ人の移民

アメリカ合衆国やカナダには、ウェールズ人移民が広く存在しますが、ウェールズ人のみで構成された植民地は限られたものでした。1617年、ウィリアム・ボーン卿がニューファンドランド島に植民者を送って恒久的な植民地を築こうとした試みは、結果として失敗に終わりました。しかし、彼は再挑戦としてトレパシーにキャンブリオルという名の植民地を設立し、ここは後にアヴァロン植民地として知られることとなりました。その名は、イングランドのグラストンベリーに由来し、アメリカにも別のアヴァロンを築くことを狙ったものでした。

その後、17世紀にはウェールズのクエーカー教徒がウェールズ人の植民地を形成するためにペンシルベニア州へと移住します。「ウェールズ・トラクト」と呼ばれる地域は、当初はウェールズ語が使用されていたものの、1690年代には様々な郡に分割されてしまいました。約束されていた自治権は実現せず、18世紀後半にはモーガン・ジョン・リースがカンブリア郡にウェールズ人の植民地を築き上げました。

テネシー州のウェールズ人移民

南北戦争後、104家族のウェールズ移民がペンシルベニア州からテネシー州東部へと移動し、ノックスビルのメカニクスビルに入植しました。彼らはジョセフとデイビッドのリチャーズ兄弟の手引きで、鉄工所で働き始めました。さらにリチャーズ兄弟は鉄工所の設立を手がけ、その後1982年のワールドフェアの会場にもなります。また、彼らは1870年に自らの教会を建設し、ウェールズの伝統を維持しました。

オハイオと南アメリカのウェールズ人移民

オハイオ州にもウェールズ移民が19世紀に多く入植し、主にウェールズ西部ケレディギョンからやってきました。南アメリカにおいては、1852年にトマス・ベンボウ・フィリップスがブラジルに約100人のウェールズ人による開拓地を設立しました。最も有名なのは1865年にプエルト・マドリンに上陸した153人の開拓者によって成立した「Y Wladfa Gymreig」というウェールズ人植民地です。

結論

ウェールズ人移民の歴史はその伝説や数々の試みに彩られています。彼らが築いたコミュニティは、新世界におけるウェールズの文化や伝統の一端を今も残しており、同時に、アメリカの多様な移民史の一部として注目されるべき重要な要素です。

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