アメリカ連合国アリゾナ準州

アメリカ連合国アリゾナ準州の成立と終焉

アメリカ連合国アリゾナ準州は、1861年から1865年まで存在した、アメリカ連合国に属する自治的領域でした。この準州は、後にアメリカ合衆国が設立したアリゾナ準州とは、地域的に重複するものの、同一ではありません。

成立の背景

南北戦争以前、現在のアリゾナ州とニューメキシコ州は、ニューメキシコ準州の一部でした。しかし、広大な準州を北部にあるサンタフェの政府が効果的に統治することは困難でした。特に、準州を南北に分断するホルナダ・デル・ムエルトと呼ばれる荒涼とした地域は、往来を著しく阻んでいました。

1860年7月、ニューメキシコ準州南部の入植者たちはツーソンで会議を開き、北緯34度以南を「アリゾナ準州」として分離独立させることを決定しました。この会議では、新準州の憲法や知事、アメリカ合衆国議会への代表者も選出されました。しかし、この提案は、新準州が奴隷州になることを懸念する議員たちの反対により、実現には至りませんでした。

南北戦争勃発と準州の独立

南北戦争が開戦すると、ニューメキシコ準州南部では連合国への支持が強まりました。これは、アメリカ合衆国がこの地域を軽視していたことが大きな理由でした。1861年3月、メシーリャの住民はアメリカ合衆国からの離脱とアメリカ連合国への加盟を決定しました。彼らは、連合国との共通の利益や地理的条件、開拓者の保護、合衆国政府による郵便業務の機能不全などを理由としました。この決定は、西部地域も含むものであり、3月28日にはツーソンでメシーリャの法令が批准され、「アメリカ連合国アリゾナ準州」としての暫定政府が発足しました。ルイス・オウィングスが暫定知事に、グランヴィル・ヘンダーソン・オウリーが連合国への加盟請願代表に選出されました。

軍事衝突と準州の支配

1861年7月、ジョン・ベイラー中佐率いるテキサス人部隊がメシーリャに到着しました。ベイラー部隊は、離脱を支持するメシーリャ住民の支援を受け、ニューメキシコ準州に侵攻しました。これに対し、フィルモア砦近くにいた合衆国軍は、ベイラー部隊を攻撃する準備をしました。7月27日、両軍はメシーリャ郊外で衝突（メシーリャの戦い）し、合衆国軍は敗北しました。合衆国軍はフィルモア砦を放棄し、北へ撤退しましたが、ベイラー軍に追撃され、降伏を余儀なくされました。

1861年8月1日、ベイラーはツーソンでの会議で定められた地域を連合国アリゾナ準州と宣言し、自身を終身知事に任命しました。この地域を自治化する法案は、1862年初めにアメリカ連合国議会で可決され、同年2月14日にジェファーソン・デイヴィス大統領によって宣言されました。

終焉

連合国はニューメキシコ作戦により支配を強化しようとしましたが、1862年、ベイラーは知事職を解任され、グロリエッタ峠の戦いでの敗北により、準州からの撤退を余儀なくされました。同年、ツーソンに駐屯していた連合国軍は、カリフォルニアからの合衆国騎馬隊と戦闘（ピカチョ峠の戦い）を行いましたが、引き分けに終わりました。これはアメリカ連合国にとって最西端での軍事行動でした。

1862年7月までに合衆国軍は準州の首都メシーリャに接近し、連合国政府はテキサス州へ逃れ、サンアントニオで亡命政府として存続しました。その後も、アリゾナでの抵抗運動はゲリラ的に継続し、連合国部隊は1865年5月の西部戦線終結まで、アリゾナの旗の下で戦い続けました。

アメリカ連合国アリゾナ準州は、短期間ながらも、南北戦争における西部戦線の重要な舞台となりました。その成立と消滅は、当時の政治情勢や住民の意識、軍事的な状況を複雑に反映したものでした。

もう一度検索