アメンエムハト4世

アメンエムハト4世

アメンエムハト4世は、エジプト第12王朝の末期、紀元前1815年頃から紀元前1806年頃にかけてファラオとして古代エジプトを統治しました。彼の治世は比較的短く、その期間は約9年間に及びました。

彼は先代のファラオ、アメンエムハト3世の時代に共同統治者としての役割を担っていました。この共同統治期間を含め、アメンエムハト4世はいくつかの重要な建築事業に関わったとされています。

特に注目されるのは、ファイユーム地方にあるメディネット・マアディの神殿を完成させたことです。この神殿は、考古最高評議会議長を務めた著名な考古学者ザヒ・ハワス氏によって、エジプト中王国時代に建設され、現在まで完全な形で残されている唯一の神殿であると評価されています。2006年初頭には、この神殿の基礎部分に関する考古学的な調査が実施されています。また、彼はファイユーム地方北東部のQasr el-Saghaに位置する神殿の建設も手がけたと考えられています。

アメンエムハト4世の統治期間は、トリノ王名表の記録によれば、厳密には9年3ヶ月と4日間でした。ヌビア地方で発見された岩壁に刻まれた銘文からは、その最初の1年間はアメンエムハト3世の共同摂政として政務にあたっていたことが伺えます。彼の治世自体は、特に大きな政治的変動や軍事的衝突もなく、比較的穏やかで平和な時代であったと評価されています。

しかし、アメンエムハト4世の死後、エジプト中王国は徐々にその勢いを失い、緩やかな衰退期に入っていったと考えられています。これは、おそらく彼の治世末期または死後に発生した後継者問題と関連していると見られています。アメンエムハト4世は、男子の直接の後継者を残すことなく世を去りました。後続の王朝の初期の王であるセベクヘテプ1世やセネブエフは、アメンエムハト4世の子息であった可能性が指摘されていますが、確実な証拠はありません。

アメンエムハト4世の治世の後、王位は彼の異母妹（あるいは叔母であった可能性も指摘されています）であるセベクネフェルに引き継がれました。セベクネフェルは約1500年ぶりにエジプトを統治した女性ファラオとして、歴史に名を刻んでいます。アメンエムハト4世とセベクネフェルが婚姻関係にあった可能性も一部で示唆されていますが、それを裏付ける確たる証拠は現在のところ見つかっていません。

彼の短いながらも比較的安定していた治世は、偉大な王アメンエムハト3世の時代の終焉と、その後のエジプト中王国の緩やかな変遷期をつなぐ重要な期間であったと言えるでしょう。

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