アヤーン・ムカルジー

アヤーン・ムカルジーについて

アヤーン・ムカルジー（Ayan Mukerji）は、1983年 8月15日に生まれたインドの映画監督、映画プロデューサー、脚本家です。主にヒンディー語映画界で活躍しており、インド映画界の歴史に名を連ねるムカルジー＝サマルト家の出身としても知られています。2009年に監督として初めて手がけた映画『Wake Up Sid』で批評家からの評価と興行的な成功を同時に収め、その後も話題作、ヒット作を世に送り出しています。

生い立ちと家族

コルカタでベンガル系のヒンドゥー教徒であるデーブ・ムカルジーの息子として生を受けました。アヤーンが属するムカルジー家は、1930年に彼の祖父であるサシャダール・ムカルジーがベンガル語映画の世界に入って以来、長きにわたりインド映画界に貢献してきました。サシャダールは、かつて著名な映画製作スタジオ「フィルミスタン」の共同設立者の一人であり、『Dil Deke Dekho』や『Ek Musafir Ek Hasina』といった数々の作品をプロデュースしました。フィルミスタンは1964年に活動を終えましたが、その跡地は映画スタジオとして現在もムカルジー家によって所有・活用されています。

アヤーンの家族には、映画界で著名な人物が多くいます。祖母サチデーヴィ・ムカルジー（旧姓ガングリー）は、俳優として名高いアショーク・クマール、アヌープ・クマール、キショール・クマールという三兄弟の妹にあたります。また、祖父サシャダールの兄弟には、プロデューサーのプラボード・ムカルジーや監督のスボード・ムカルジー、そして女優ラーニー・ムカルジーの祖父にあたるラヴィンドラ・モーハン・ムカルジーがいます。さらに、アヤーンの父デーブの兄弟には、ジョイ・ムカルジー、スビール・ムカルジー、そして女優カジョールとタニシャー・ムカルジーの父であるショーム・ムカルジーがいます。このように、アヤーンはインド映画界の重鎮たちが連なる家系の中で育ちました。

学歴としては、ムンバイのジャムナバーイー・ナールシー・スクールを卒業後、ラジーヴ・ガンディー工科大学に入学しますが、わずか1年で中退しています。その後、映画製作の現場に関わることを決め、監督アシュトーシュ・ゴーワリケール（アヤーンの姉妹スニタ・ゴーワリケールの夫にあたる）の映画『Swades』にクラッパーボーイとして参加し、映画業界でのキャリアを歩み始めました。

キャリアの発展

『Swades』での経験を皮切りに、アヤーン・ムカルジーは映画の世界に深く関わるようになります。次に参加したのは、映画監督カラン・ジョーハルが手がけた『さよならは言わないで』の製作チームでした。これらの現場での経験を経て、彼は一時的に製作の場から離れ、自身の監督デビュー作となる映画『Wake Up Sid』の脚本執筆に専念します。そして2009年、ランビール・カプールとコーンコナー・セーン・シャルマーを主演に迎えた同作で監督デビューを果たしました。この作品は、批評家から高く評価され、同時に興行的にも成功を収め、アヤーンはフィルムフェア賞の新人監督賞を受賞するという幸先の良いスタートを切りました。

監督第2作は、再びダルマ・プロダクションの製作、主演にランビール・カプール、そしてディーピカー・パードゥコーンを迎えた『若さは向こう見ず』でした。この作品は2013年に公開されるや否や大ヒットを記録し、わずか公開1週間で興行収入10億ルピーを超える驚異的な数字を叩き出しました。当時のインド映画の興行記録を塗り替えるほどの成功を収め、インド映画歴代興行成績で第3位にランクインする快挙を成し遂げました。この作品により、アヤーンはフィルムフェア賞の監督賞にノミネートされ、その手腕が高く評価されました。

そして2022年、アヤーン・ムカルジーはキャリア最大のプロジェクトとなる『ブラフマーストラ』を世に送り出しました。この作品は、彼が構想する壮大なファンタジーアドベンチャー「アストラバース三部作」の第一作目にあたります。ランビール・カプール、アーリヤー・バット、モウニー・ロイといった新世代の俳優に加え、アッキネーニ・ナーガールジュナやインド映画界の巨匠アミターブ・バッチャンといったベテラン俳優も出演しました。『ブラフマーストラ』は世界中で公開され、興行収入は43億1000万ルピーを超える大ヒットとなり、2022年のヒンディー語映画年間興行成績で第1位、インド映画全体でも年間第6位、そしてインド映画歴代興行成績でも第21位にランクインしました。Box Office Indiaは同作の興行成績を「ヒット」と評価しており、アヤーンは大規模なアクションとファンタジー要素を融合させた作品でも成功を収めることができる監督であることを証明しました。

アヤーン・ムカルジーは、若くしてインド映画界で確固たる地位を築き、特に現代的な感覚と大規模なエンターテイメントを融合させた作品作りで注目されています。今後の「アストラバース」シリーズの展開や、さらなる新作への期待が寄せられています。

もう一度検索