アラジン (オペラ)

クルト・アッテルベリが作曲したオペラ『アラジン』（ニ長調、作品43）は、有名な説話集『千夜一夜物語』に含まれる「アラジンと魔法のランプ」の物語を基にしています。ブルーノ・ハルト・ヴァーデンとイグナツ・イヒャエル・ウェレミンスキーが台本を手掛け、スウェーデン語版とドイツ語版の二つの言語で存在します。初演は1941年3月18日、スウェーデンのストックホルムにある王立歌劇場にて行われました。

作曲の背景

本作の作曲構想は、1936年8月にアッテルベリが台本作家のヴァーデンらとドイツのガルミッシュ＝パルテンキルヒェンで会った際に芽生えました。台本の大部分が完成していた中で、アッテルベリは翌1937年7月15日にピアノ譜の筆を開始。ピアノ譜は1940年8月24日に完成し、その後オーケストレーション作業に取り掛かり、翌1941年1月28日に終えました。ただし、序曲はドイツ初演の際に後から書き加えられています。台本のスウェーデン語への翻訳は、アッテルベリ自身が妻と共同で行いました。台本作家の一人であるウェレミンスキーがユダヤ人であったため、当時の政治情勢を反映して、出版社は彼の名前を公表しませんでした（ウェレミンスキーは後にアメリカへ亡命し、1942年に死去しています）。アッテルベリが指揮活動や他の作曲で多忙であったこと、そして第二次世界大戦の勃発といった状況は、このオペラの作曲期間が長引く要因となりました。

上演の歴史

世界初演は1941年にストックホルムのスウェーデン王立歌劇場で行われ、ステンオーク・アクセルソンがタクトを執りました。当時のスウェーデン国王グスタフ5世を含む王室関係者も観覧しましたが、オペラはアッテルベリたちの期待に反し、残念ながら成功とは言えませんでした。結局、上演回数はわずか11回にとどまりました。この世界初演公演はスウェーデン放送局によって放送され、アセテート盤に記録されました。1968年に録音された序曲と合わせ、この初演録音は2017年まで唯一の録音資料でした。
初演時の主要キャストには、アラジン役のアイナル・アンデション、ライラ役のルース・モバーグ、ムルク役のジョエル・ベルグルンドらが名を連ねています。
ドイツ初演は、初演と同年の1941年10月18日にケムニッツ劇場で開催されました。当時の指揮者は大成功だったと述べていますが、この公演以降、ドイツ国内での上演は長らくありませんでした。
転機となったのは、2017年3月11日に行われたブラウンシュヴァイク劇場での公演です。これは世界で3回目の上演であり、ジョナス・アルバーが指揮を務めました。この公演はラジオでも放送され、批評家からは熱狂的な評価を得ました。主要キャストには、マイケル・ハ（アラジン）、ソレン・マインゲネ（ライラ）、フランク・ブリーズ（ナズレディン）などが参加しました。この公演では、政治的な配慮から台本の一部が変更され、舞台設定が元の1941年版から旧ソ連下の中央アジアに移されました。

音楽的特徴

アッテルベリは以前から東洋的な旋律を作品に取り入れようと試みていましたが、成功に至っていませんでした。『アラジン』には、そうした過去の試みで得られた多くの音楽的着想が活かされています。
音楽スタイルとしては、後期ロマン派のダイナミックな形式が採用されており、全体を通して明るい音色、伸びやかな旋律線、そしてエキゾチックな東洋の主題が支配的です。一部の批評家は、ニコライ・リムスキー＝コルサコフのオペラに見られるようなオリエンタリズムと、アメリカのポピュラー音楽の要素が混ざり合っていると評しています。アッテルベリの交響曲は比較的に演奏機会がありますが、『アラジン』を含む彼のオペラの多くは上演される機会が少なく、残念ながら忘れられた存在となっています。

編成

このオペラには、以下のような大規模な編成が用いられています。
木管楽器: フルート2（ピッコロ持ち替え含む）、オーボエ2（コーラングレ持ち替え含む）、クラリネット2（変ホ調クラリネット、バスクラリネット持ち替え含む）、ファゴット2
金管楽器: ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ1
打楽器: ティンパニ、マルチパーカッション3名（オリエンタルティンパニ、トライアングル2、タンバリン、スネアドラム、バスドラム、シンバル、タムタムなど）
鍵盤楽器他: ハープ、ピアノ、チェレスタ
ブラスバンド: オーボエ2、クラリネット2、トランペット3（舞台裏または別途）
弦楽器: ヴァイオリン第1部6、ヴァイオリン第2部4、ヴィオラ3、チェロ3、コントラバス2

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