アラスカ地震

1964年アラスカ地震：聖金曜日に発生した巨大地震

1964年3月27日、アラスカ州を巨大な地震が襲いました。この地震は、キリスト教の聖金曜日に発生したことから「聖金曜日地震」とも呼ばれています。震源はアラスカ州南西部のプリンス・ウィリアム湾で、太平洋プレートと北アメリカプレートの境界であるアリューシャン海溝付近で発生した海溝型地震です。

当初、表面波マグニチュード（Ms）は8.4〜8.6とされていましたが、その後の研究でモーメントマグニチュード（Mw）9.2という、アメリカ合衆国地震観測史上最大規模の地震であったことが判明しました。この巨大地震により、アラスカを中心に131名が亡くなるという痛ましい被害が発生しました。

また、この地震は日本で発生した新潟地震と同様に、液状化現象による大きな被害をもたらし、土質力学分野での液状化現象の研究を活発化させるきっかけとなりました。

地震の発生とメカニズム

現地時間17時36分（UTC：3月28日 3時36分）、プリンス・ウィリアム湾近くのカレッジ・フィヨルドで、約850kmに及ぶ断層が破壊されました。地震は大きな余震を伴い、3分から5分間続きました。海底の変動により発生した津波は、多くの犠牲者と甚大な被害をもたらす主な要因となりました。地表は最大で11.5mも隆起し、アラスカ州内250,000平方キロメートルが地震の影響を受けました。

被害状況

地震による直接的な被害で9名、津波による被害で106名がアラスカ州内で亡くなり、アラスカ州外でも津波によって16名が犠牲になりました。被害総額は、当時の貨幣価値で3億ドルを越える甚大なものでした。

アンカレッジの被害

震源から北西に約120km離れたアンカレッジでは、地震による直接的な被害で9名が亡くなりました。アンカレッジ市内は津波の被害を免れたものの、繁華街では深刻な被害が発生し、特にターナゲン・ハイツのような不安定な地盤の上に築かれた地区では、地滑りや崩落が相次ぎ、多くの家屋が被害を受けました。しかし、震源からの距離が離れていたため、他の地区では深刻な被害は免れました。

アンカレッジから南東約60kmのクック湾に位置するガードウッドとポーテージは、壊滅的な被害を受けました。ガードウッドは内陸部に数キロメートル離れた場所に再建されましたが、地形変動で水没したポーテージは再建を断念せざるを得ませんでした。

アラスカ州内のその他の地域の被害

プリンス・ウィリアム湾、ターナゲン・アーム半島、コディアック島などの港町や村は、地震、津波、火災、地滑りなど複合的な要因により大きな被害を受けました。バルディーズは壊滅し、西に約7km離れた場所に再建されました。チェネガやアフォナックといった沿岸に位置していた先住民の村はほぼ完全に破壊されました。

カナダでの被害

地震発生から3時間18分後、1.4mの津波がブリティッシュコロンビア州のプリンスルパートを襲いました。その後、バンクーバー島西岸のトッフィーノを襲い、フィヨルドを遡ってポート・アルバニーを2度襲い、375軒の家屋に被害を与え、55軒を押し流しました。ホットスプリングス・コーブ、ゼバロス、アマイなどの町も被害を受けました。ブリティッシュコロンビア州での被害額は、当時の貨幣価値で1000万カナダドルと推定されています。

その他の地域への影響

カリフォルニア州クレセントシティでは、12人が津波に巻き込まれて亡くなりました。アメリカ西海岸のワシントン州やオレゴン州、ハワイ州などでも被害が報告されています。また、ロサンゼルスでは津波による船舶の被害が確認されました。日本でも津波が観測され、大船渡で90cm、神戸港で23cmの津波が記録されました。志摩半島ではカキ養殖いかだが流される被害が発生しました。

この地震は、その規模の大きさから、世界中の地震研究者にとって重要な事例となりました。また、液状化現象の研究を大きく進展させるきっかけとなり、後の防災対策に大きな影響を与えました。

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