アラス共和国

アラス共和国（アゼルバイジャン語: Araz Türk Cümhuriyyəti、アルメニア語: Արաքս Հանրապետություն）は、1918年12月に南コーカサスに建国された短命な未承認国家です。アラクス共和国、アラクシー共和国とも呼ばれます。現在のところ、アゼルバイジャン領ナヒチェヴァン自治共和国の位置にほぼ相当します。

この共和国の名前は、同地域を流れるアラス川に由来しています。アラス共和国の建国は、アゼルバイジャン民主共和国の与党であったミュサヴァト党と、オスマン帝国の青年トルコ人政府の支援を受け、ジャファルグル・ハン・ナヒチェヴァンスキーによって宣言されました。

アラス共和国が建国された背景には、イギリスの南コーカサス司令官であったジョン・オリバー・ワードロップ卿による国境提議がありました。この提議は、当該地域をアルメニア第一共和国に割り当てるものでした。これに対し、アゼルバイジャン側が強く反発し、アラス共和国の建国へとつながりました。

しかし、アラス共和国の存在は長くは続きませんでした。1919年6月中旬に勃発したアラス戦争で、アルメニア第一共和国軍が侵攻し、地域を制圧したことで、アラス共和国は事実上消滅しました。しかし、このアルメニアの侵攻をきっかけに、アゼルバイジャン民主共和国の軍もナヒチェヴァンへ侵攻を開始しました。そして、同年7月下旬には、アゼルバイジャン軍が地域の支配権を握り、アルメニアは同地域での支配権を失いました。

アラス共和国は、その短い存在期間にもかかわらず、南コーカサスの複雑な歴史における重要な一幕を担いました。その建国と消滅は、この地域の国境画定や民族対立といった問題を浮き彫りにしています。アラス共和国の歴史は、現代の南コーカサスにおける政治情勢を理解する上で重要な要素の一つと言えるでしょう。

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