アルメニア第一共和国

アルメニア共和国（アルメニア語: Հայաստանի Հանրապետություն）は、1918年から1920年のごく短期間に存在した国家です。ロシア革命後の混乱期、ザカフカース民主連邦共和国の解体に伴い独立を宣言しました。

政権の中核を担ったのは、民族主義的な社会主義政党であるアルメニア革命連盟（ダシュナク党）でした。この党は、アルメニア民族の独立と社会主義的な改革を目指していました。

独立当初、アルメニア共和国はセーヴル条約によってオスマン帝国から広大な領土を編入する予定でした。しかし、隣国のアゼルバイジャン民主共和国との間には、ナゴルノ・カラバフをめぐる対立が激化し、武力衝突に発展しました。さらに、1918年にはグルジア民主共和国とも短い戦争を経験するなど、周辺国との関係は不安定でした。

このような状況下、アルメニア共和国は内外からの圧力にさらされます。北からはボリシェヴィキ、西からはムスタファ・ケマル・パシャ率いるトルコのアンカラ政府からの圧力が強まり、国家の存亡は危機に瀕しました。

最終的に、1920年12月2日、赤軍が首都エレバンに入城し、アルメニア共和国の政権は崩壊しました。その結果、アルメニア・ソビエト社会主義共和国の樹立が宣言され、アルメニアはソビエト連邦の一部となりました。

ソビエト連邦崩壊後、現在のアルメニアは自らを「第二共和国」と規定し、この時期のアルメニア共和国を「第一共和国」と呼称することで、両者の歴史的な連続性を強調しています。これは、失われた独立の記憶を継承し、国家としてのアイデンティティを確立しようとする動きと言えるでしょう。

特筆すべき人物として、駐日アルメニア共和国領事に任命されたディアナ・アブガルがいます。1920年7月にハモ・オハンジャニャン首相によって任命されたディアナは、世界初の女性外交官とされています。彼女は1889年に新婚旅行で日本を訪れたことをきっかけに、1891年から夫とともに日本で商売を始め、1937年に横浜で生涯を閉じました。

アルメニア共和国は短命に終わりましたが、その歴史は現在のアルメニアにとって重要な意味を持っています。民族自決の精神と、困難な状況下でも独立を求めた人々の勇気は、今もなお語り継がれています。

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