アラセイトウ属

アラセイトウ属の概要

アラセイトウ属（学名：Matthiola）は、アブラナ科に属する植物の一群で、専門的にはマッティオラ属とも呼ばれます。この名前は、イタリアの博物学者であり医師でもあるピエトロ・アンドレア・マッティオリに由来しています。アラセイトウ属には、全48種の植物が含まれ、南ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア、さらにはマデイラ諸島やカナリア諸島に自生しています。特に、これらの植物は総称して「ストック」と呼ばれることが多いです。

日本には、江戸時代初期にこの属の植物が持ち込まれ、大正時代の末期には千葉県安房地域で初めての切り花生産が行われました。また、バージニアストック（Malcolmia maritima）はアラセイトウ属ではなく、同じアブラナ科に属する別の分類に属しています。

栽培種

アラセイトウ属の中で栽培用途のある代表的な2種について紹介します。まず、「アラセイトウ（紫羅欄花）」の学名はMatthiola incanaで、英名では「ガーデンストック」と呼ばれます。その次に、「ヨルザキアラセイトウ」はMatthiola longipetalaとして知られ、英名は「ナイトセンテッドストック」です。

アラセイトウ（紫羅欄花）

アラセイトウは、特にストックとして知られ、南ヨーロッパが原産です。原産地では多年草として成長しますが、日本では主に一年草として扱われ、特に秋に種を蒔きます。花期は早春から春にかけてで、花壇に植えられる以外にも切り花としての需要があります。西洋文化では、香りの良い植物が重視される中で、このガーデンストックもその一環として高く評価されています。

この植物の花は、一重咲きから八重咲きまで多岐にわたります。また、枝分かれせずに咲く品種と、スプレー咲きと呼ばれる枝分かれした咲き方の二種類があります。発芽に適した温度は20℃前後で、8月中に種を蒔くと、秋には早くも花が咲くため、特に切花用に栽培されることが多いです。直根性の特性があるため、種はポット苗に数粒まき、良い芽を選んで育てるのが望ましいです。

日本では、八重咲きの花が人気で、特に切花の用途が一般的です。しかし、八重咲きの株は種を採ることが難しく、通常、八重と一重の特性を持つ株から選抜して採種します。この際に、幼苗の段階での鑑別が必須で、熟練を要する作業となります。

ヨルザキアラセイトウ

この植物は、夜になると香りを強く放つため「ナイトセンテッドストック」という名でも知られています。通常は一年草として扱われ、イギリスでは春先の3月から5月にかけて種を蒔き、それ以降の5月から9月に花を楽しむことができます。

文化的背景

アラセイトウ属には、ローマ神話に登場するエピソードがあります。ここでは、美しい姉妹が心優しい兄弟と恋に落ちますが、悪人たちによって兄弟が殺され、姉妹も自ら命を絶つという悲劇が描かれています。神プリヤップは彼女たちを愛し、魂を黄色いストックの花に宿らせたと言われています。

さらに、イギリスではプロポーズや結婚式の場面において、ストックを用いた花束が定番となっています。これにより、アラセイトウ属の花は愛や誓いの象徴としても大切にされています。

まとめ

アラセイトウ属はその美しさや香りから、多くの人々に愛され続けています。栽培も比較的容易で、園芸愛好家にとって魅力的な植物です。この植物を通じて、香りや色合いの新たな楽しみ方を見つけてみてはいかがでしょうか。

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