アラビカコーヒーノキ

アラビカコーヒーノキとは

アラビカコーヒーノキ（学名: Coffea arabica）は、アカネ科に属する常緑低木で、エチオピアのアムハラ高原が原産とされています。ロブスタコーヒーノキ、リベリカコーヒーノキと並び、「コーヒー3原種」の一つとして知られています。世界で流通するコーヒーの約6割を占め、その風味の高さから広く消費されています。

特徴

アラビカコーヒーノキは、野生では10メートルほどまで成長しますが、栽培される際には収穫の効率性を考慮し、2〜3メートル程度に剪定されます。葉は濃い緑色で光沢があり、対になって生えます。葉の付け根からは、ジャスミンのような香りのする白い5弁の花が咲きます。果実は扁平な楕円形をしており、熟すにつれて緑から赤、赤紫色へと変化します。品種によっては黄色く熟すものもあります。

種

野生種

アラビカコーヒーノキは、エチオピア中西部山岳地帯の標高1000〜2500メートルの雲霧林に自生しています。現在栽培されている多くの品種は、17〜18世紀にエチオピアで採取された少数の原木が祖先であると考えられています。南スーダンやケニアの一部にも自生していますが、それらが自然に生えたものか、人間が持ち込んだものかは不明です。コーヒー農家は、アラビカコーヒーノキの遺伝的多様性を維持するために、野生種を利用することもあります。しかし、気候変動により、野生種が絶滅する可能性も指摘されています。

栽培品種

アラビカコーヒーノキは、原産地のエチオピアで遺伝的にも形態的にも多様な集団であることが判明しており、外見が異なっていても植物学上の亜種や変種ではなく、「栽培品種」として扱われます。近年では、耐病性や生産性を向上させるための品種改良が進められており、他の品種との交配も行われています。

栽培

アラビカコーヒーノキは、気候や土壌などの影響を大きく受けやすく、デリケートな品種です。栽培には適切な環境が不可欠です。

気候

最適な生育環境は、年間気温が18〜21℃の範囲で保たれていることです。23℃を超えると果実の発育と熟成が過度に促進され、コーヒーの味が劣化します。また、30℃程度の高温が続くと、生育が鈍化し、葉が黄色くなるなどの異常が見られます。低温も好まず、17℃以下の気温では生育が悪くなり、霜が降りると果実に悪影響を及ぼします。

土壌

有機質に富んだ火山灰土質が栽培に適しています。これは、アラビカコーヒーノキの起源であるエチオピアのアムハラ高原が、火成岩が風化した腐植土壌であることに由来しています。ブラジルやアンデス山脈、スマトラ島やジャワ島などの主要な生産地も、エチオピアの高原地帯と似た土壌環境を持っています。土壌の違いはコーヒーの味に影響を与え、酸性の土壌で栽培された豆からは、酸味の強いコーヒーが抽出される傾向があります。

育成

種をまいてから約40〜60日で発芽し、6ヶ月程度で50cmほどの苗木に成長します。成長すると収穫作業効率向上のため、2〜3メートル程度に剪定されます。苗木を農園に植え替えてから約2〜3年後の雨季に開花し、2〜3日後には枯れ、緑色の果実が実ります。開花後6〜8ヶ月で果実が赤く熟し、収穫期を迎えます。収穫期は地域によって異なり、南半球では5〜9月、北半球では11月頃からが一般的です。

生産

世界のコーヒー豆生産量の約6割をアラビカコーヒーノキが占めています。生産量は気候に大きく左右され、年によって変動します。2018年現在、世界最大の輸出国はブラジルで、ベトナム、コロンビア、ペルーがそれに続きます。2018年度の生産量は、60kg袋で102,725,000袋（約616万トン）と推計されています。

利用

アラビカコーヒーノキの豆は、ロブスタコーヒーやリベリカコーヒーに比べて風味が優れているとされ、広く消費されています。栽培が難しいにもかかわらず、生産量が多いのは、その風味の良さが理由です。環境の変化に敏感であるため、同じアラビカコーヒーでも産地によって風味に明確な個性が現れます。例えば、リオ・デ・ジャネイロ周辺の土壌で栽培された豆には「リオ臭」と呼ばれる独特の臭いがつきます。一般的に、高地で生産された豆ほど酸味、甘み、コクが強く、高値で取引されます。また、アラビカコーヒー豆から抽出されるコーヒーのカフェイン含有量は、ロブスタコーヒーの約半分程度です。完熟した果実は「レッドチェリー」と呼ばれ、少し甘く、かつては果実や果汁を発酵させて酒に混ぜたり、そのまま食べたりするなどの利用法もありました。

脚注

注釈

出典

参考文献

田口護『田口護の珈琲大全』NHK出版、2003年。ISBN 4-14-033193-3。
広瀬幸雄、星田宏司、柄沢照久『コーヒー・ビギナーズ・ブック』人間の科学社、2008年。ISBN 978-4-8226-0277-2。
M.B.P. Camargo (2010). “The impact of climatic variability and climate change on Arabic coffee crop in Brazil” (英語) (PDF). Bragantia 69: 239–247. doi:10.1590/S0006-87052010000100030.

関連項目

コーヒーノキ
コーヒー豆
S795
% Arabica
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* ウィキスピーシーズには、アラビカコーヒーノキに関する情報があります。

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