アラメダ・コリドー

アラメダ・コリドー：ロサンゼルスの物流革命を支える鉄道路線

アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス。そのダウンタウン東部にあるロサンゼルス鉄道ターミナルと、世界有数のコンテナ港であるロサンゼルス港およびロングビーチ港を結ぶ、全長約32キロメートルの貨物専用鉄道路線、それがアラメダ・コリドーです。この路線は、貨物列車のためのいわば高速道路として機能し、かつて深刻な交通渋滞を引き起こしていた港湾と鉄道ターミナル間の物流を劇的に改善しました。

建設の背景：逼迫する物流と環境問題

ロサンゼルス港とロングビーチ港は、アメリカ合衆国全体の貨物取扱量の3分の1、西海岸の7割を占める巨大な港湾です。これらの港湾とロサンゼルス鉄道ターミナル間の貨物輸送は、古くからの重要な物流ルートでしたが、既存の鉄道路線は単線で老朽化が進み、市街地を走行するため、運行本数に制限がありました。特に、全長1マイルにも及ぶ貨物列車が低速で走行することで、踏切閉鎖時間が長く、激しい交通渋滞が常態化していました。

加えて、トラック輸送による大気汚染も深刻な問題でした。増加の一途を辿るコンテナ取扱量、慢性的な交通渋滞、環境問題。これらの問題を一挙に解決するために、アラメダ・コリドー計画が立案されました。

既存の路線は、複雑で非効率的なルートでした。アラメダ・コリドーは、それらの路線をバイパスする、新たな直線ルートとして建設されました。その建設には、当時のビル・クリントン大統領が「重要な国家プロジェクト」と呼ぶほどの大規模な投資が行われ、総工費は24億ドルを超えました。

建設：巨大プロジェクトの推進

アラメダ・コリドー建設は、1980年代初頭に計画が開始され、1989年にはアラメダ・コリドー輸送公社(ACTA)が設立されました。建設は1997年に開始され、2002年に完成しました。全長20マイルのうち10マイルの中央部分は、アラメダ街道を拡幅し、上下線の中央に33フィート（約10メートル）の掘り割りを設けて線路を敷設しました。この掘り割り（トレンチ）により、道路との平面交差が完全に解消されました。

このプロジェクトは、アメリカ合衆国政府、カリフォルニア州政府、地方自治体、港湾当局、鉄道会社、そして市民からの幅広い支援を受けて実現しました。建設には、インフラ整備だけでなく、地域住民への雇用創出も重視されました。

開通と効果：劇的な改善

2002年4月15日の開通後、アラメダ・コリドーはすぐにその効果を発揮しました。

輸送容量の増加: 1日あたりの輸送本数は、従来の20～35本から100本（2020年時点の見込み）へと大幅に増加しました。
輸送時間の短縮: ロサンゼルス鉄道ターミナルまでの輸送時間は、従来の2時間30分以上（UPの場合）または3～4時間（BNSFの場合）から、45分～30分に短縮されました。
列車速度の向上: 列車の平均速度は、従来の5～20MPH（時速約8～32キロメートル）から30～40MPH（時速約48～64キロメートル）に向上しました。
コンテナ取扱量の増加: 両港湾のコンテナ取扱量は、従来の800万TEUから2,400万TEU（2020年時点の見込み）へと増加しました。
交通渋滞の解消: 209カ所あった平面交差踏切が撤廃され、一般交通の遅延は90％減少しました。
環境負荷の軽減: 鉄道からの排出物は28％減少し、騒音は90％減少しました。

さらに、建設を通じて10,500人の雇用が創出され、港湾関連では70万人への間接的な雇用効果がありました。

今後の展望：電化と延伸

現在、アラメダ・コリドーの電化計画が進められています。これは、沿線の大気汚染物質削減を目指したものです。また、港湾のさらなる発展を見据え、ロサンゼルス鉄道ターミナルから東へ80マイル（約128キロメートル）に及ぶ路線延伸計画「アラメダ・イースト」も検討されています。この延伸により、東部への貨物輸送能力が向上し、物流ネットワーク全体の効率化が期待されています。

アラメダ・コリドーは、単なる鉄道路線ではなく、ロサンゼルスの経済発展と環境保全に大きく貢献する、重要なインフラ整備プロジェクトです。その効果は、物流効率の向上にとどまらず、地域経済の活性化や環境改善など、多方面に広がっています。

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