アリエル2号

アリエル2号

アリエル2号（英: Ariel 2, UK-C）は、1964年にイギリスが打ち上げた科学衛星であり、特に電波天文学の観測を主目的とした人工衛星として知られています。これは、イギリスが進めた一連の科学衛星計画である「アリエル計画」の一部として実施されたもので、宇宙空間から電波を観測することを目的とした世界初の人工衛星という、宇宙開発史において極めて重要な位置を占める存在です。

開発と製造

アリエル計画は、イギリスがアメリカ合衆国との国際協力体制の下で進めたものです。アリエル2号の開発計画は、イギリスの科学・工学研究機関（SERC）が中心となって推進されました。衛星本体の設計および製造は、アメリカ国内のウェスティングハウス・エレクトリック社が担当しました。この協力体制は、当時のイギリスが自国で大型の衛星を開発・製造する能力や、それを打ち上げる能力を持たなかったため、アメリカの技術力とインフラを活用することによって実現しました。衛星の打ち上げ時の重量は68キログラムと、初期の科学衛星としては一般的な規模でした。

打ち上げ詳細

アリエル2号の宇宙空間への輸送と軌道投入は、アメリカ航空宇宙局（NASA）がその役割を担いました。打ち上げに使用されたのは、固体燃料式の小型ロケットであるScout X-3です。Scoutロケットファミリーは、その簡潔な構造と信頼性から、比較的小型の科学衛星を打ち上げる際に多く用いられました。

打ち上げは、グリニッジ標準時（GMT）の1964年3月27日17時25分23秒に成功裏に行われました。打ち上げ場所は、アメリカ合衆国バージニア州にあるNASAのワロップス射場の第3発射台（LA3）からです。この打ち上げにより、アリエル2号は計画通りの軌道に投入されました。

ミッション内容と意義

アリエル2号の主たるミッションは、宇宙からの電波を観測し、電波天文学的なデータを得ることにありました。宇宙の様々な天体、例えば銀河、クエーサー、超新星残骸などは、可視光だけでなく、電波を含む幅広い波長の電磁波を放出しています。しかし、地球の大気は多くの周波数帯の電波を吸収したり反射したりするため、地上の電波望遠鏡で観測できる範囲には限界があります。アリエル2号のように大気圏外に衛星を配置することで、大気の影響を受けずに、これまで観測が困難だった宇宙からの電波を直接捉えることが可能になります。

アリエル2号は、電波天文学を宇宙空間で行うという、この先進的なアプローチを初めて実現した衛星でした。これにより、宇宙の電波源に関する新たな情報が得られ、当時の電波天文学研究に貢献しました。

運用期間と影響

アリエル2号の科学観測ミッションは、打ち上げから約8ヶ月後の1964年11月をもって終了しました。比較的短いミッション期間ではありましたが、この間に取得されたデータや、衛星を運用する中で得られた知見は、その後の衛星を用いた電波天文学観測や、より高度な宇宙望遠鏡の開発にとって貴重な経験となりました。

アリエル2号の成功は、人工衛星が天文学研究、特に地上からの観測が難しい電波領域において極めて有効なツールであることを証明しました。この衛星が電波天文学衛星の先駆けとなったことは、その後の多くの宇宙観測計画に影響を与え、今日の高度な宇宙望遠鏡による観測体制へと繋がる礎の一つとなりました。アリエル2号は、小さな機体ながら、宇宙科学、特に電波天文学の分野に新たな扉を開いたパイオニアとして、宇宙開発史において記憶されています。

関連項目

• - 1964年の宇宙飛行

（参考文献は入力に含まれていましたが、具体的な文献名がないため本文には含めません）

もう一度検索