アリストン (スパルタ王)

アリストン：スパルタ王、その生涯とデマラトス誕生の謎

アリストンは、紀元前550年から紀元前515年までエウリュポン朝のスパルタ王として君臨しました。先王アガシクレスの息子であり、アギス朝の王アナクサンドリデスと同時代を生きた人物です。

テゲアとの戦い

スパルタは長きにわたりテゲアとの間で戦争を繰り広げていましたが、アリストンと共同統治者であったアナクサンドリデス2世の時代になり、ようやくテゲアに対して優位に立つことができるようになりました。この勝利は、アリストンの治世における重要な功績の一つと言えるでしょう。

後継者デマラトスの誕生秘話

アリストンは二度結婚しましたが、なかなか子宝に恵まれませんでした。そんな中、彼は友人で評判の高いアゲトスの妻があまりにも美しいという噂を聞きつけ、彼女を自分の妻にしたいと考えました。そこでアリストンは、アゲトスに「自分の持ち物の中で欲しいものを一つあげるから、同じように君の持ち物で欲しいものを一つ譲ってほしい」と提案します。アリストンにはすでに妻がいたため、まさか自分の妻を要求されるとは思ってもいなかったアゲトスは、この提案を承諾し、契約を交わしました。アリストンはアゲトスに彼が望むものを与えた後、アゲトスの妻を要求したのです。アゲトスは困惑し拒否しましたが、一度交わした契約は覆せません。彼は苦渋の決断を迫られ、妻をアリストンに奪われることになってしまいました。こうしてアリストンは二人目の妻と離婚し、アゲトスの妻を新たに娶りました。そして、この妻との間に生まれたのが、後にスパルタ王となるデマラトスです。

ヘロドトスの記述によれば、デマラトスという名前には特別な由来があります。デマラトスが生まれる前、人々は名声の高いアリストンのために、彼に子供が恵まれるようにと神に祈りを捧げました。その結果、アリストンの子には「デーモス（国民、国家）」と「アラー（祈願）」を組み合わせたデマラトスという名前が与えられたと言われています。

しかし、デマラトスが誕生して間もなく、アリストンは彼を自分の子供として認めようとしませんでした。生まれた時期に疑念があったのかもしれません。その後、アリストンは態度を翻しデマラトスを自分の子と認めましたが、この一件は人々の記憶に残りました。そして、後にデマラトスが王位を追われる際、この時の出来事がその根拠の一つとして持ち出されることになったのです。

アリストンの生涯は、テゲアとの戦いにおける勝利や、デマラトスという後継者をもうけるという功績だけでなく、その誕生をめぐる複雑な事情によって、後世に語り継がれることとなりました。

参考文献

• - パウサニアス著、飯尾都人訳、『ギリシア記』、龍渓書舎、1991年
• - ヘロドトス著、松平千秋訳、『歴史』、岩波書店、1972年

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