テゲア

古代都市テゲア：歴史と神話が交錯する地

テゲアは、古代ギリシアのアルカディア地方に存在したポリス（都市国家）であり、現在のギリシャ、ペロポネソス半島に位置しています。その歴史は神話時代にまで遡り、数々の戦乱や変遷を経て、重要な宗教的中心地としても栄えました。現代では、トリポリ市の一部としてその名を残しています。

神話と起源

テゲアの伝説的な創建者は、アルカディア王リュカオンの息子テゲアテスであるとされています。このテゲアテスの名が、都市と住民の名前の由来となりました。当初、テゲアは複数のデモイ（町）に分かれていましたが、後に集住して一つの都市国家を形成します。この都市国家としてのテゲアを創建したのは、英雄テレポスの祖父にあたるアレオス王でした。

パウサニアスによると、テゲアは以下の9つの町から構成されていたとされています。

ガレアタイ
ピュラケイス
カリュアタイ
コリュテイス
ポタキダイ
オイアタイ
マンテュレイス
エケウエテイス
* アペイダンテス（アペイダス王の時代に追加）

テゲアは、ホメロスの叙事詩『イリアス』にも登場し、初期のアルカディアで特に有名な都市の一つでした。また、ヘロドトスは、エケモス王がヘラクレスの息子ヒュロスを倒したことで、テゲアは軍事国家としての名声を得たと伝えています。

古代におけるテゲア

テゲアは、スパルタがアルカディアへの支配を拡大しようとした際、長きにわたって抵抗しました。初期には、スパルタ軍を打ち破るなど、その軍事力は強大でした。しかし、スパルタがデルポイの神託に従いオレステースの骨をテゲアから持ち帰ると、テゲアは敗北し、スパルタの優位性を認めざるを得なくなります。こうして、テゲアはスパルタ中心のペロポネソス同盟の一員となりますが、その独立性は維持されました。

ペルシア戦争では、テゲアはペロポネソス半島で2番目に大きな軍事力を持つ国家として活躍しました。テルモピュライの戦いやプラタイアの戦いにも参加し、同盟軍の左翼を担うなど、重要な役割を果たしました。プラタイアの戦いの直後、テゲアは再びスパルタと戦いますが敗北します。この時代、テゲアとそのアテナ・アレア神殿は、スパルタにとって不都合な人々が逃げ込む場所として機能していました。

ペロポネソス戦争では、テゲアはスパルタの同盟国として忠実に戦いました。しかし、レウクトラの戦い（紀元前371年）後、テゲアのスパルタ派は追放され、アルカディア同盟に加わります。その後、マンティネイアがアルカディア同盟を離反すると、テゲアは同盟に留まり、マンティネイアの戦いではスパルタと対峙しました。

後期のテゲアとローマ時代

テゲアは、アイトリア同盟に加わった後、一時的にスパルタと同盟を結びます。その結果、テゲアはマケドニアを巻き込んだクレオメネス戦争に巻き込まれ、最終的にアカイア同盟に併合されました。その後、スパルタの攻撃を受けますが、アカイア人によって再建されました。ストラボンの時代には、テゲアはアルカディア地方で唯一住民がいた都市でした。パウサニアスの時代にも重要な場所として残り、公共の建物について詳細な記録が残っています。

アテナ・アレア神殿は古代テゲアの重要な宗教的中心地であり、その創建はアレオス王に遡るとされています。幾何学およびアルカイック期には、多くのブロンズ像が奉納されました。

ローマ帝国時代には、テゲアは市民生活を維持していましたが、西暦395年から396年にかけてゴート族の襲撃を受けました。ローマの詩人たちは、神話の登場人物を歌う際に「テゲアの」という形容詞を用いています。

中世のテゲア：アミュクリオンへ

中世に入ると、テゲアは「アミュクリオン」という名で呼ばれるようになります。1082年にはアミクライ主教管区の中心地となり、13世紀には十字軍によって占領され、アカイア公国の一部となりました。しかし、14世紀にはビザンティン帝国に奪還され、正教会の管区が復活しました。

考古学的な発見

テゲアの遺跡は、19世紀後半から発掘調査が行われました。特にアテナ・アレア神殿の発見は重要で、その規模や彫刻作品から、当時のテゲアの繁栄をうかがい知ることができます。発掘された遺物は、テゲア考古学博物館やトリポリ考古学博物館に展示されています。中でもテゲア考古学博物館には、スコパスのコレクションが所蔵されています。

現在のテゲア

現在のテゲアは、アレアという近代的な村の中に位置しています。アレアはトリポリの南東約10キロに位置し、テゲアの歴史を今に伝えています。


テゲアは、その長い歴史の中で、神話、戦乱、宗教、文化が交錯する重要な場所でした。その遺跡は、古代ギリシアの栄華を今に伝える貴重な証人となっています。

もう一度検索