アリフ・マーディン

トルコ出身の音楽プロデューサー、編曲家として世界的に知られるアリフ・マーディン（Arif Mardin、1932-2006）は、半世紀にわたり音楽界の最前線で活躍し、数え切れないほどのアーティストに影響を与え、歴史に残る名盤を生み出しました。

1932年3月15日、イスタンブールに生を受けた彼は、幼い頃からピアノを習い、音楽的素養を育みました。学業においては、イスタンブール大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスという異分野を修めた後、音楽の道を志し、アメリカのバークリー音楽大学で専門的な学びを深めます。

プロデューサーとしてのキャリアは、特に1960年代後半から本格化します。1969年には、トム・ダウド、ジェリー・ウェクスラーという名プロデューサーたちと共に、ダスティ・スプリングフィールドの傑作アルバム『Dusty in Memphis』を手がけ、その手腕が高く評価されました。同年には自身のソロアルバム『Glass Onion』も発表しています。また、初期からアヴェレイジ・ホワイト・バンドやビー・ジーズ、ソウルの女王アレサ・フランクリン、ヤング・ラスカルズといった個性豊かなアーティストたちとの共同作業を通じて、早くから成功を収めました。

その後、彼のプロデュース活動はさらに広がり、ジャンルや世代を超えた多くの著名アーティストの作品に関わります。ソウル/R&B界からはロバータ・フラック、ダニー・ハサウェイ、チャカ・カーン、アニタ・ベイカー、ディオンヌ・ワーウィックなどが、ポップ/ロック界からはダイアナ・ロス、ジョージ・ベンソン、デヴィッド・ボウイ、ベット・ミドラー、ローラ・ニーロ、ロッド・スチュワート、クイーン、フィル・コリンズ、ホール＆オーツ、スクリッティ・ポリッティなどが彼のプロデュースを受けました。他にも、ラウル・ミドン、ジョン・プライン、モダン・ジャズ・カルテット、スティーブ・グッドマン、ウィリー・ネルソン、ザ・マンハッタン・トランスファー、ダニー・オキーフ、バリー・マニロウ、ロイ・ブキャナン、リンゴ・スター、カーリー・サイモン、カルチャー・クラブ、マリリン・マーティン、ハワード・ジョーンズ、ナジー、オフラ・ハザ、リサ・フィッシャー、そしてVH1 Divas Live 99でのティナ・ターナー、ホイットニー・ヒューストン、シェール、ブランディといった面々の作品にもその名がクレジットされています。

キャリアの晩年には、シンガーソングライターのノラ・ジョーンズと組み、彼女のデビューアルバム『Come Away with Me』（2002年）とセカンドアルバム『Feels Like Home』（2004年）という歴史的な成功作をプロデュースしました。これらの作品はグラミー賞を受賞し、アリフ・マーディンのキャリアに新たな輝きを加えました。

プロデューサーとしてだけでなく、編曲家としてもその才能を発揮し、例えばロッド・スチュワートのアルバムではストリングスアレンジを手がけるなど、楽曲に深みと彩りを与えました。彼の革新的なアイデアと卓越した技術は、多くのアーティストの才能を最大限に引き出し、時代を超えて愛される音楽を生み出す原動力となりました。

音楽界への多大な貢献は、グラミー賞によって高く評価されています。彼は、第18回と第45回のグラミー賞において、最も優れたプロデューサーに贈られる「最優秀プロデューサー賞」を2度受賞しています。

約1年間にわたる膵臓がんとの懸命な闘病生活を経て、2006年6月25日、ニューヨークで74歳でその生涯を閉じました。しかし、彼が遺した膨大な数の名作と、その創造的な精神は、今なお世界中の音楽ファンに影響を与え続けています。

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