アルゼンチンの鉄道

アルゼンチンはかつて、総延長4万キロメートルに及ぶ広大な鉄道網を有し、世界屈指の規模を誇っていました。しかし、20世紀後半からの道路整備の進展により、バスやトラック輸送に主役の座を奪われ、鉄道網は縮小を余儀なくされました。現在では旅客列車の運行はごく一部の路線に限定されていますが、貨物列車は多くの路線で運行を続けており、アルゼンチンの経済を支えています。

歴史

アルゼンチンの鉄道の歴史は、1857年、イギリス資本の会社によって建設されたブエノスアイレス近郊の短距離路線に始まります。その後、19世紀末までに総延長1万6500キロメートルにまで拡大しました。この発展は、アルゼンチンの開拓と畜産業の発展と密接に関連しており、特に牛肉などの輸出品の輸送に大きな役割を果たしました。

鉄道建設は州政府とヨーロッパからの民間資本によって推進され、多くの路線の運営はヨーロッパ企業が担っていました。鉄道で働く人々の間で広まったサッカーは、アルゼンチンの国民的スポーツとして定着しました。1940年代後半には、全ての外国資本系鉄道と国内資本・州営鉄道が国有化され、アルゼンチン国鉄が誕生しました。

しかし、道路交通の発達による競争激化と経営悪化により、1990年代初頭には大規模なストライキが発生。その影響もあり、アルゼンチン国鉄は民営化・州営化されました。多くの長距離路線や地方路線は廃止または州に移管され、貨物輸送のみを続ける路線も多数存在しました。大ブエノスアイレス圏では近郊鉄道が民営化されましたが、サービス低下や事故多発などの問題も発生しました。

2010年前後からは段階的な再国有化が進められ、2017年までにブエノスアイレス地下鉄と一部の例外を除いて、再び国営化され、新たなアルゼンチン国鉄が誕生しました。貨物輸送部門も再国有化されましたが、経営が安定している企業は民営のまま存続しています。

1948年の国有化時に、アルゼンチンの鉄道路線網は、将軍や大統領の名前を冠した6つの鉄道に再編されました。これらの名称は現在でも一般的に用いられています。

主要路線

アルゼンチンの鉄道網を構成する主要路線は以下のとおりです。各路線はブエノスアイレスを起点とし、それぞれ異なる地域へ延びています。路線によっては線路幅が異なり、三線軌条を用いて異なる規格の車両が運行される区間も存在します。また、電化方式も路線によって異なります。

サン・マルティン将軍鉄道: ブエノスアイレスからメンドーサ方面へ。一部区間はLRTが運行されています。
ロカ将軍鉄道: ブエノスアイレスから州南部およびバリローチェ方面へ。交流電化区間があります。
ベルグラーノ将軍鉄道: ブエノスアイレスから内陸部・北部方面へ。メーターゲージを採用し、貨物輸送が盛んです。アンデス横断鉄道も含まれます。
ミトレ将軍鉄道: ブエノスアイレスからサンタフェ州、コルドバ州方面へ。直流電化区間があります。
サルミエント鉄道: ブエノスアイレスから西の内陸部へ。直流電化区間があります。
ウルキサ将軍鉄道: ブエノスアイレスから北部方面へ。ウルグアイ、パラグアイ、ブラジルと接続しています。線路幅は標準軌です。

その他の路線

上記6路線以外にも、ブエノスアイレス市内には地下鉄や路面電車が運行されています。また、リオ・ガジェゴスとリオ・トュルビオ間の工業鉄道、フエゴ島にある観光鉄道なども存在します。

隣国との接続

アルゼンチンの鉄道は、チリ、ボリビア、パラグアイ、ブラジル、ウルグアイと接続しており、国際的な貨物輸送に重要な役割を果たしています。ただし、線路幅の違いなどにより、すべての国との間で直通運転が行われているわけではありません。

まとめ

アルゼンチンの鉄道は、かつての隆盛から衰退、そして再建という波瀾万丈の歴史を歩んできました。現在も課題は残りますが、貨物輸送を中心に重要な役割を果たしており、今後更なる発展が期待されます。

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