フエゴ
島は、
南アメリカ大陸の南端部に広がるティエラ・デル・フエゴ諸
島の中で、最も大きな
面積を持つ主
島です。
スペイン語では「ティエラ・デル・フエゴの大
島」を意味するイスラ・グランデ・デ・ティエラ・デル・フエゴと呼ばれますが、一般的には単にイスラ・グランデ、あるいは諸
島名と同じティエラ・デル・フエゴと呼ばれることもあります。その広さは約47,992
平方キロメートルに及びます。
地理的には、北側で
マゼラン海峡によって
南アメリカ大陸から隔てられており、南側では
ビーグル水道を挟んで
ナバリノ島やオステ
島などが位置しています。この
島は、西経68度36分38秒の経線を境に、西側をチリが、東側を
アルゼンチンが領有し、分割統治されています。チリ領は約29,484.7
平方キロメートル、
アルゼンチン領は約18,507.3
平方キロメートルを占めています。
アルゼンチン領内には、
ビーグル水道に面して、しばしば世界最南端の都市とされる
ウシュアイアがあります。
フエゴ
島の発見は
1520年に遡ります。世界一周航海の途上で
マゼラン海峡を通過していた
フェルディナンド・マゼラン一行が、この
島を目にしました。
島名であるティエラ・デル・フエゴは、
スペイン語で「
火の土地」を意味し、これはマゼランが
島に多くの焚き
火を確認したことに由来するとされています。これらの焚き
火は、
島の先住民族であったヤーガン族が熾していたものです。半裸で生活していた彼らが寒さをしのぐための
火であったとも、マゼランの艦隊の接近を仲間へ知らせるための警報の
火であったとも伝えられています。
島の気候は、おおむね
温帯の西岸
海洋性気候(Cfc)か、
寒帯の
ツンドラ気候(ET)に分類されます。高緯度に位置しながらも、
海洋性気候の影響で冬の気温は比較的穏やかで、年間の気温差も小さい特徴があります。そのため、年間平均気温が低くても、夏の気温によって西岸
海洋性気候と
ツンドラ気候のどちらになるかが決まります。
島の地形は東西で異なり、西側はダーウィン山脈のような険しい山地が多く、海岸線は複雑な
フィヨルド状を呈しています。一方、東側は比較的平坦で、海岸線も滑らかです。
島南部にはファグナーノ湖という大きな湖があります。
南アメリカ最南端とされる
ホーン岬は、フエゴ
島よりもさらに南にあるエルミテ諸
島のオルノス
島南端に位置しており、フエゴ
島の一部ではありません。
フエゴ
島の先住民族はヤーガン族でしたが、ヨーロッパ人の入植が進むにつれて人口が激減し、混血も進みました。その結果、現在では純粋な血統のヤーガン族はほとんど存在しないとされています。彼らの固有の言語であるヤーガン語も衰退し、2022年に最後の
母語話者であったクリスティーナ・カルデロンさんが亡くなったことで、地球上からヤーガン語の
母語話者は消滅しました。
主要な居住地として、
アルゼンチン領
ティエラ・デル・フエゴ州の州都である
ウシュアイア(2010年時点で人口56,825人)は、常時人間が居住する場所としては世界最南端の都市とされています。同じ
アルゼンチン領では、リオ・グランデ(同69,175人)がフエゴ
島内では最も人口が多い都市です。チリ領では、ポルベニール(人口5,645人)、プリマベーラ(人口1,016人)、ティマウケル(人口423人)といった町村があります。南米大陸最南端の都市としては、大陸側にあるチリの
マガジャネス・イ・デ・ラ・アンタルティカ・チレーナ州の州都、プンタ・アレーナス(人口13万人)が挙げられます。
豊かな自然環境を持つフエゴ
島には、国際的に重要な湿地として、
ラムサール条約に登録されている場所が4ヶ所あります。これらはチリ領北部のロマス湾、
アルゼンチン領東部の
大西洋岸保護区、
アルゼンチン領東端のミトレ半
島、そして
アルゼンチン領南部の
ウシュアイア周辺に広がるビンシゲラ氷河と関連する泥炭湿原です。これらの地域は、特有の生態系や渡り鳥の中継地として保護されています。