アルタイアー

アルタイアー（古希: Ἀλθαία, Althaiā）は、古代ギリシャ神話にその名が刻まれた、アイトーリア地方のプレウローンを治める王テスティオスの娘です。彼女は隣国カリュドーンの王オイネウスのもとへ嫁ぎ、王妃となりました。

アルタイアーとオイネウスの間には、多くの子供たちが生まれました。その中でも最も有名なのは、後に великий（偉大な）英雄となるメレアグロスです。メレアグロスの他に、息子たちとしてはトクセウス、テュレウス、クリュメノスが、娘たちとしてはメラニッペー、ゴルゲー、デーイアネイラがいました。娘のメラニッペーは、後にメレアグロスと共に「メレアグリデス」と呼ばれる一団に含まれることもあります。

アルタイアーの人生における最も劇的な出来事は、息子メレアグロスが誕生した際に起こりました。運命を司る三女神モイライがその場に現れ、彼の寿命は暖炉で燃えている一本の薪が燃え尽きる時までである、と予言したのです。幼い息子の命が一本の薪に結びついていることを知ったアルタイアーは、驚きと恐れから、すぐにその薪を火の中から救い出し、安全な場所に隠し、大切に保管しました。これによって、メレアグロスの命は一旦は守られたのです。

しかし、悲劇は避けられませんでした。時が経ち、成人した英雄メレアグロスは、ある争いに巻き込まれました。この争いの中で、彼は皮肉にも自身の母アルタイアーの兄弟にあたる、つまり彼自身の叔父たち二人を手にかけました。肉親である兄弟を息子に殺されたアルタイアーの心には、激しい怒りと深い悲しみが渦巻きました。母としての息子への愛情と、姉妹として殺された兄弟たちへの弔いの感情が、彼女の内で激しく衝突しました。

最終的に、アルタイアーは復讐の念に駆られ、かつて息子の命綱として隠しておいた、運命の薪を取り出しました。そして、その薪を再び炉の火の中に投げ入れたのです。薪が炎に包まれ、徐々に灰へと変わっていくにつれて、遠く離れた場所にいたメレアグロスもまた、その生命力を失っていき、薪が完全に燃え尽きた時、彼は息を引き取りました。こうして、アルタイアーは自らの手で、最も愛する息子を死に追いやったのです。

息子を殺したという行為の恐ろしさと、彼を失った絶望に耐えきれなくなったアルタイアーは、深い後悔と悲しみに沈みました。彼女は、息子の妻であるクレオパトラーと共に、自らの命を絶ったと伝えられています。母の愛と復讐心の間で引き裂かれたアルタイアーの物語は、ギリシャ神話の中でも特に悲劇的なエピソードとして語り継がれています。

参考文献

オウィディウス『変身物語』VIII, 451–546

関連情報

アルタエア (小惑星)

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