デーイアネイラ

デーイアネイラ（ギリシア語：Δηϊάνειρα / Δῃάνειρα, Deianeira；ラテン語形：Deianira, Dejanira）は、ギリシア神話に登場する女性で、「（汝の）夫を殺めし者」という意味を持ちます。彼女の物語は、愛と裏切り、そして悲劇に彩られています。

生い立ち

デーイアネイラは、アイトーリアのカリュドーン王オイネウスと王妃アルタイアーの間に生まれた王女です。彼女には、兄にメレアグロス、姉にメラニッペーがいます。メラニッペーは後に、ほろほろ鳥に変身したと伝えられています。

デーイアネイラは、父オイネウスがディオニューソスの寵愛を受けていた間に生まれたとされています。その美貌から、河神アケローオスに求愛されましたが、父王はヘーラクレースを婿に選びました。これにより、ヘーラクレースとアケローオスは争い、最終的にヘーラクレースが勝利し、デーイアネイラは彼の三番目の妻となりました。

結婚と悲劇への序章

ヘーラクレースとの結婚後、デーイアネイラは嫡男ヒュロスをもうけます。しかし、彼女の人生は平穏とは程遠いものでした。家族でエウエーノス川を渡る際、渡し守のケンタウロス、ネッソスに襲われそうになったことがあります。この時、ヘーラクレースがヒュドラーの毒矢でネッソスを射抜き、デーイアネイラは難を逃れました。

ネッソスは死の間際、デーイアネイラに「自分の血液は媚薬である」と嘘を告げました。デーイアネイラはこれを信じ、後に夫ヘーラクレースが、捕虜にした王女イオレーに恋慕しているという噂を聞き、嫉妬に駆られます。彼女はネッソスの血を肌着（トゥニカ）に塗り、使者のリカースにヘーラクレースへ届けさせます。

悲劇の結末

しかし、ネッソスの血にはヒュドラーの毒が混ざっており、この毒によってヘーラクレースは重篤な状態に陥ります。デーイアネイラは、自分の行為がもたらした結果を知り、深い絶望に打ちひしがれます。彼女は、自分の過ちを悔い、首をくくって自殺しました。

デーイアネイラの悲劇は、彼女が誤った情報に翻弄され、嫉妬と絶望から悲劇的な結末を迎えたことを物語っています。彼女は「ヘーラクレースの死の原因をなした人物」として、後世に語り継がれています。

系図

デーイアネイラの系図は以下の通りです。
父：オイネウス（カリュドーン王）
母：アルタイアー（カリュドーン王妃）
兄：メレアグロス
姉：メラニッペー
夫：ヘーラクレース
子：ヒュロス

参考文献

『世界神話事典』角川選書（2004年）ISBN 4-04-703375-8

関連項目

メレアグリデス
* デジャニラ (小惑星)

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