アルダブラゾウガメ

アルダブラゾウガメ（Aldabrachelys gigantea）

分類と特徴

アルダブラゾウガメは、爬虫綱カメ目リクガメ科に属する大型のリクガメです。アルダブラゾウガメ属の模式種であり、その特徴的な外見と生態から多くの人々に知られています。

分布

セーシェル諸島のアルダブラ環礁に固有の種です。しかし、人為的な移入により、セーシェル国内の他の島々や、タンザニア、モーリシャス、レユニオンなどにも生息しています。

形態

最大甲長は138cmにも達し、背甲は黒や黒褐色で一色です。腹甲はやや小さく幅広い形状をしています。頭部はやや扁平で、頭部、頸部、四肢、尾は暗灰色をしています。

オスはメスよりも大きくなる傾向があり、成熟したオスは尾が長く、頭部が肥大化し、腹甲にはメスの甲羅を合わせるための窪みができます。卵は直径4.8～5.5cmの球形で、殻は白く硬いです。

遺伝的な変異が非常に少なく、亜種の特定が困難という特徴も持っています。

分類に関する詳細

以前はリクガメ属に分類されていましたが、分子系統学的な研究により、クモノスガメ属やマダガスカルリクガメ属との近縁性が示唆され、独立したアルダブラゾウガメ属として分類されるようになりました。

本種の原記載である Testudo gigantea の模式標本は現存せず、その産地や特徴からキアシガメであるという説もありました。しかし、後に新しい模式標本が指定され、学名 Testudo gigantea が引き続き使用されることになりました。

また、かつては本種と同一とされていた個体群の中に、化石種とされていたセーシェルセマルゾウガメやセーシェルヒラセゾウガメが含まれていることが判明しました。これらの亜種は遺伝的な差異が少ないものの、形態的な特徴から区別されています。

現在では以下の亜種が認められています。

Aldabrachelys gigantea gigantea (基亜種):
最大甲長123cm。背甲はドーム型で、特定の甲板の長さが特徴的。
Aldabrachelys gigantea arnoldi:
最大甲長96cm。背甲はやや鞍型で、特定の甲板の長さが異なる。
Aldabrachelys gigantea daudinii (絶滅亜種):
最大甲長83cm。背甲は鞍型。
Aldabrachelys gigantea hololissa:
最大甲長138cm。背甲は角ばったドーム型で、特定の甲板の長さが特徴的。

生態

生息環境

海岸沿いの草原や内陸部の低木林、マングローブからなる湿地帯など、様々な環境に生息します。日光浴はあまりせず、日陰で活動することが多いです。高温時には、薄明薄暮性傾向が強まり、日中は日陰で過ごしたり、水浴びや泥浴びをします。

暑さが苦手で、洞窟に避難することもあります。

食性

主に植物食で、イネ科、カヤツリグサ科の草本、シクンシ科の低木の若枝や葉を食べます。動物の死骸や同種の糞を食べることもあり、鳥のヒナを襲うこともあります。海岸沿いと内陸部で食べるものが異なり、生息環境に応じて食性を変えます。水は浅い水たまりから飲んだり、食物や代謝によって水分を摂取します。

繁殖

繁殖様式は卵生です。雨期にオスはメスに覆い被さり交尾を迫ります。産卵は乾季の薄暮時から夜間にかけて行われ、平坦な場所を好みます。産卵数や頻度は個体密度や栄養状態によって大きく変動します。卵は81-150日で孵化し、アルダブラ環礁では主に雨季に孵化します。

行動

集団行動をすることが多く、動きは鈍いですが、岩場や坂でも身軽に動けます。知能が高く、記憶力や学習能力に優れているため、簡単な訓練を行うことができます。

人間との関係

歴史

1766年にモーリシャスに持ち込まれた個体の飼育記録があり、長寿なことで知られています。最も長寿な個体は255年生きたという記録がありますが、科学的な根拠は不明です。

保護状況

食用やペット目的の乱獲により、生息数は激減しましたが、現在は保護活動により回復傾向にあります。アルダブラ環礁は世界自然遺産に登録されており、厳重に保護されています。しかし、生息地の乾燥化や食糧不足、災害や感染症による絶滅の懸念も残っています。

飼育

ペットとして飼育されることもありますが、大型種のため広大なスペースが必要です。日本では基亜種の幼体が流通しており、飼育には十分な注意が必要です。動物園では亜種の特定が進められており、適切な環境での飼育が求められます。

その他

本種は、ガラパゴスゾウガメと並び、大型のリクガメとしてよく知られています。その生態や歴史、保護に関する研究は、これからも続けられるでしょう。

参考資料

安川雄一郎 (2006) ,『決定版 日本の爬虫両生類』, 平凡社
Turtle Taxonomy Working Group (2017)
* TTWG (2017)

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