アルチェオ・ガリエラ

アルチェオ・ガリエラ

アルチェオ・ガリエラ（Alceo Galliera）は、1910年5月3日に北イタリアの主要都市ミラノに生を受け、1996年4月21日にブレシアでその生涯を閉じた、イタリアを代表する指揮者の一人です。彼の音楽的な才能は、パルマ音楽院で教鞭をとっていた父からの初期教育によって早くから開花しました。その後、故郷であるミラノの音楽院に進学し、そこでピアノ、オルガン、そして作曲といった多岐にわたる音楽分野の専門的な研鑽を積みました。

初期キャリアと指揮者への転向

音楽院での学びを終えた後、ガリエラは教育者としての道を選び、母校であるミラノ音楽院で後進の指導にあたります。1932年からは正式に教員として籍を置き、教育者としてのキャリアを築いていきました。

しかし、彼のキャリアは新たな方向へと舵を切ります。1941年、彼は教育者の立場から指揮者へと活動の軸を移すことを決意します。この転向後、彼はイタリア音楽界の中心地の一つであるローマで、ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団を指揮して公式な指揮者デビューを飾りました。その指揮ぶりが認められると、イタリア随一の歌劇場であるミラノ・スカラ座をはじめ、国内各地の主要な舞台でオペラや管弦楽作品の指揮を執る機会を得て、活動の場を広げていきました。

戦時下の経験と活動再開

順調に進んでいたガリエラのキャリアは、第二次世界大戦の勃発という世界情勢の大きな波に影響を受けます。戦禍が拡大する中、彼は隣国スイスへの亡命を余儀なくされ、一時的に音楽活動の中断を余儀なくされました。この期間は、彼にとって困難な時期であったと考えられます。

終戦後、平和が訪れると共に、ガリエラは再び指揮台へと戻ります。1945年にスイスで開催されたルツェルン音楽祭での出演を皮切りに、彼は国際的な音楽シーンでの活動を再開させました。このルツェルン音楽祭は、彼の戦後のキャリアにおける重要な一歩となりました。

主要ポストと後進育成

戦後の活動再開後、ガリエラはイタリア国内だけでなく、国際的にも重要なポストを歴任しました。イタリアのヴェネツィアにある歴史ある歌劇場、フェニーチェ座では、1957年から1960年までの3年間、指揮者を務め、同劇場の活動に貢献しました。

さらに、彼はフランスへと活動の場を広げます。フランスを代表するオーケストラの一つであるストラスブール市立管弦楽団（現在のストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団）においては、1964年から1972年までの約8年間にわたり首席指揮者としてその発展に尽力しました。この長期にわたる在任期間は、彼がオーケストラから厚い信頼を得ていたことを示しています。

また、ガリエラは教育者としての側面も持ち合わせていました。後進の育成にも熱心であり、彼から指導を受けた音楽家の中には、後に世界的な指揮者として名を馳せるシャルル・デュトワがいます。デュトワがガリエラから受けた影響は、彼のその後のキャリアにも重要な意味を持ったことでしょう。

アルチェオ・ガリエラは、教育者から指揮者へと転身し、戦時下の困難を乗り越え、イタリア国内外の主要な音楽機関で活躍した人物として、音楽史にその名を刻んでいます。彼の指揮は、多くの聴衆に感銘を与え、また後進の育成にも力を尽くした功績は大きいと言えます。1996年、85歳でその波乱に満ちた、しかし実り多い生涯を終えました。

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