アルテモチル

アルテモチル（β-アルテエテル）について

アルテモチル（Artemotil）、またはβ-アルテエテル（β-arteether）は、速効性の殺シゾント薬として知られています。特に、クロロキン耐性を持つ熱帯熱マラリア原虫によるマラリアや、重篤な合併症である脳マラリアの治療に用いられる医薬品です。この薬剤は、中国原産の植物であるクソニンジン（Artemisia annua）に含まれる天然化合物、アルテミシニンを基に半合成されています。

開発と歴史

アルテモチルは、オランダの製薬会社ブロカセフによって開発され、2000年に市場に導入されました。かつては重症マラリアの治療において重要な役割を果たしていましたが、現在では、第一選択薬であるアルテメテルと同等の治療効果が得られないため、重症マラリアに対する第二選択薬としてのみ使用されています。

化学的特徴

アルテモチルは、ジヒドロアルテミシニンのC10位にβ-エーテル結合を持つ化合物です。この構造が、アルテモチルの薬理活性と代謝特性に影響を与えています。

代謝

アルテモチルは、経口投与または注射投与後、速やかに血中に吸収されます。血漿中濃度は、投与後3～12時間でピークに達し、その後徐々に減少します。血漿中での半減期は1～2日と比較的長いです。体内に入ったアルテモチルは、主に肝臓で代謝されます。代謝には、肝臓の薬物代謝酵素であるCYP3A4が関与しており、この酵素によって脱エチル化され、活性代謝物であるジヒドロアルテミシニンに変換されます。さらに、ジヒドロアルテミシニンはグルクロン酸抱合を受け、グルクロン酸抱合体として胆汁を介して体外に排出されます。

使用上の注意

アルテモチルは、重症マラリアの治療に有効な薬剤ですが、他の抗マラリア薬と比較して、治療効果が劣る場合があります。そのため、現在では重症マラリアの第一選択薬としては使用されません。アルテモチルを使用する際には、患者の状態や他の薬剤との併用を考慮し、医師の指示に従う必要があります。

その他

アルテモチルは、その速効性から、緊急を要するマラリア患者の治療に貢献してきました。しかし、薬剤耐性の問題や、より効果的な薬剤の開発により、現在ではその使用頻度は減少しています。アルテモチルの開発と使用は、抗マラリア薬の研究開発における重要な一例と言えるでしょう。

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