アルニコ磁石

アルニコ磁石：強力な永久磁石とその用途

アルニコ磁石は、鉄、アルミニウム、ニッケル、コバルトを主成分とする合金から作られる鋳造磁石です。その名称は、各元素記号の頭文字を組み合わせたものです。銅などの添加物を入れることもあり、強力な永久磁石として様々な用途で使用されてきました。

アルニコ磁石の特徴

アルニコ磁石は、ネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石などの希土類磁石に匹敵する強力な磁力を持ちます。地球磁場の約3,000倍に相当する1,500ガウス程度の磁束密度を誇ります。また、約800度という高いキュリー点も特徴です。キュリー点とは、磁性を失う温度のことです。

しかし、アルニコ磁石は保磁力がそれほど高くないため、薄い板状では自己減磁を起こしやすく、使用に制限があります。これは、磁石自身の磁界によって磁化が減少する現象です。

アルニコ磁石の歴史と衰退

20世紀半ばまでは、アルニコ磁石は最も一般的な永久磁石でした。しかし、1960年代のコンゴ動乱によるコバルト価格の高騰により、より安価で加工しやすいフェライト磁石が台頭し、アルニコ磁石は主役の座を明け渡すことになりました。

アルニコ磁石の用途

アルニコ磁石は、その強力な磁力を活かして、様々な機器に使用されています。

電動機やセンサー: アルニコ磁石の高い磁束密度と安定した磁力は、電動機やセンサーなどの精密機器に最適です。
スピーカーユニット: アルニコ磁石は、スピーカーユニットの磁気回路に広く使用されています。特に、高音質のスピーカーにはアルニコ磁石が好んで使われます。その理由の一つは、アルニコ磁石は導電性を持つため、ボイスコイルからの逆起電力を抑制できる点です。これにより、アンプの動作が安定します。ただし、フェライト磁石でも工夫次第で同様の効果を得ることは可能です。
アルニコ磁石を用いたスピーカーは、フェライト磁石を用いたものと比較して、磁束がユニット外部に漏れにくいという利点があります。そのため、ブラウン管テレビなどの磁気に影響を受けやすい機器の近くでも使用できます。また、アルニコ磁石は、強い磁力を得るために長さを長くした棒状にするのが有効で、ユニットを小型にまとめることができます。

エレクトリックギターのピックアップ: アルニコ磁石は、エレクトリックギターのピックアップにも使用され、その音質は多くのミュージシャンに高く評価されています。多くの製品に「アルニコ」の名を冠したモデルが存在します。

獣医学: 変わった用途として、アルニコ磁石を牛に飲ませ、胃の中に誤って入った鉄片を吸着させて取り除くという方法があります。これは創傷性心膜炎を予防する目的で行われます。

まとめ

アルニコ磁石は、強力な磁力と独特の音質特性を持つ永久磁石です。歴史的にはフェライト磁石などに取って代わられましたが、その優れた特性から、現在でも高性能機器や音響機器などに利用されています。その高い価格がネックとなる場合もありますが、独特の特性を求める用途には、いまだに欠かせない存在です。

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