保磁力

保磁力（Coercivity）とは

保磁力とは、磁化された磁性体を、磁化されていない状態、つまり磁化がゼロの状態に戻すために必要な、外部から加える反対向きの磁場の強さを指します。抗磁力とも呼ばれます。この値は、磁性体の特性を理解し、適切な材料を選択する上で非常に重要です。

保磁力の単位

保磁力の単位には、CGS単位系ではエルステッド [Oe] が用いられ、SI単位系ではアンペア毎メートル [A/m] が用いられます。これらの単位間の換算は、1 [A/m] = 4π×10^-3 [Oe] となります。

ヒステリシスと保磁力の関係

強磁性体を外部磁場に入れると、その磁場に応じて磁化が進行し、磁束密度が増加します。しかし、その後磁場を減少させても、磁束密度は元の曲線に沿って戻るわけではなく、ヒステリシスと呼ばれる現象を示します。外部磁場がゼロになった時でも、磁性体には磁化が残っており、これを残留磁化といいます。この残留磁化をゼロにするために必要な、逆向きの磁場の強さが保磁力です。

磁化と磁束密度の関係

磁化と磁束密度は、強磁性体の透磁率が高い場合には近似的に同一視できます。しかし、透磁率が低い永久磁石材料などでは、この近似が成り立たず、磁束密度を正確に評価する必要があります。

保磁力の応用

保磁力は、磁性材料の用途によって、大きさが重要になります。例えば、永久磁石の材料としては、保磁力が大きいことが望ましいです。これは、外部磁場によって磁力が容易に失われないようにするためです。一方、変圧器の磁芯のように、磁化と消磁を繰り返す用途では、保磁力が小さい方がエネルギー損失を抑えられます。保磁力は材料の組織や残留ひずみの量によって変化するため、材料の特性に応じて最適な保磁力を持つ材料を選ぶ必要があります。

減磁と消磁

磁性体の磁力は、逆磁場や温度変化によって減少することがあり、この現象を減磁といいます。また、磁力を失わせることを消磁といいます。

関連項目

• - 磁気テープ
• - ヒステリシス損（鉄損）
• - 磁性材料
• - 消磁
• - 船体消磁

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