胃

胃の概要

胃（い、英語：stomach）は、消化器の重要な構成要素であり、食物を消化するための器官です。ヒトの胃は、消化管の中で食道の後に位置し、十二指腸と連なっています。横隔膜の下にあり、腹腔内に突出していることからその位置は腹腔臓器と呼ばれます。具体的には、肝臓の左側に位置し、体表からは胸骨の下縁、もしくはみぞおちの近くに当たる部分に相当します。ただし、胃の大きさや位置は個人によって異なっており、特に胃下垂と呼ばれる状態では胃が垂れ下がることがあります。

胃の構造

胃は管状であり、入口と出口が狭く、それ以外の部分が膨らんで袋状の形をしているのが特徴です。その形状は生体と死体で異なり、生体では通常鈎状を呈しています。食道につながる部位を噴門部、十二指腸につながる部分を幽門部、そしてそれ以外の部分を胃体部と呼ぶことに注意が必要です。全体的には左側に弧を描く形をしており、特に噴門から幽門にかけての左側は大彎（だいわん）、そして右側は小彎（しょうわん）と呼ばれています。

胃の上部にあたる部分は胃底部と呼ばれ、かつてこの部分が臥位での検査時に見えたため名付けられました。内側は折りたたまれた襞を形成しており、通常の容積は約50ミリリットルですが、食後には最大で1.5から1.8リットルまで膨らむことがあります。幽門部は第1腰椎右側辺りに位置しています。

胃の壁と粘膜の構造

胃壁は複数の層から成り立っており、内側から粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5層構造を持っています。そして、筋層の外側は腹膜により覆われています。この胃壁の構造が、胃癌の進行度を判断する上でも重要な要素となります。

胃の粘膜には、無数の胃小窩（いしょうか）と呼ばれる微細な孔が開いており、そこに胃腺が存在します。胃腺は粘膜の下層まで伸びており、主に塩酸と消化酵素であるペプシノゲンを分泌します。ペプシノゲンは不活性な形で生成されますが、塩酸と反応することで活性化され、ペプシンとなり食物の消化に寄与します。

さらに、壁細胞からは胃酸（塩酸）が分泌され、内因子と呼ばれる物質がビタミンB12の吸収を助ける役割も果たしています。副細胞は粘液を分泌し、胃酸から自身を保護する機能を持ちます。

胃の機能

胃の主要な機能は、食物を消化し、栄養素を吸収することです。食物が胃に入ると、胃腺より分泌されるガストリンがペプシノゲンや胃酸の分泌を促進し、消化活動を活発化させます。食物が十二指腸に移動すると、セクレチンがガストリンの分泌を抑え、消化活動は終了します。

また、胃は自らを消化しないように、ガストリンやアセチルコリン、ヒスタミンといった物質の働きによって胃液の分泌が制御されています。ストレスや他の要因によってこのバランスが崩れると、胃潰瘍のような疾患を引き起こす可能性があります。

胃の疾患

胃には様々な疾患が存在し、胃炎や胃潰瘍、さらには胃癌やポリープ、悪性リンパ腫などが報告されています。また、胃の中に異物が入ることや出血、穿孔といった事態も考えられます。

動物の胃

多くの動物もヒトと同じ単一の胃を持っていますが、ヤギや牛などの反芻類や鳥類は複数の胃を持つ特徴があります。複胃は、食道に近い前胃と遠い後胃に分かれ、反芻の過程や消化に優れた役割を果たします。

反芻類の胃は、第一胃から第三胃が反芻胃として機能し、これにより食べ物が発酵され、消化が円滑に行われます。これらの胃は、食材としても利用されることが多く、特にその特性から詰め物料理に用いられることがあります。鳥類では、前胃が消化を助ける腺胃としての機能を持ち、筋胃は食物を擦り潰す役割を果たしています。

まとめ

胃は消化器の中でも特に重要な役割を担っており、食物の消化や栄養の吸収に大きく寄与しています。その構造や機能を理解することは、様々な疾患を予防し、健康を保つために重要です。

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