アルノ・ブレーカー

アルノ・ブレーカー：ナチス時代の彫刻家、その光と影

アルノ・ブレーカー（1900年7月19日 - 1991年2月13日）は、ナチス・ドイツ時代に公共作品を多く手がけたことで知られる、ドイツの彫刻家、建築家です。

生涯と創作

生い立ちと修業時代

ブレーカーは、1900年に石工の親方である父のもと、エルバーフェルトで生まれました。幼少の頃から家業を手伝いながら、工芸と美術学校でロダンやミケランジェロの作品に触れ、彫刻家としての基礎を築きました。その後、デュッセルドルフ美術アカデミーに進学し、建築や彫刻を学びました。

パリでの活動

1924年、ブレーカーはパリを訪れ、ジャン・コクトー、ジャン・ルノワール、パブロ・ピカソなど、当時の芸術家たちと交流を深めました。フレヒトハイムとの契約により、パリの芸術シーンで頭角を現し始めます。1927年からはパリに居を構え、北アフリカへの旅を通じて、アリスティド・マイヨール、シャルル・デスピオ、イサム・ノグチなど、多くの芸術家と親交を深めました。また、ギリシャ人女性デメトラ・メッサーラと出会い、結婚しました。この頃の作品は、ロダンやマイヨールなどの影響を受けながらも、独自の作風を確立し始めました。

ナチス・ドイツにおける活動

1934年、ブレーカーはドイツに帰国します。ナチス政権下では、その才能が認められ、アドルフ・ヒトラーの庇護を受け、数々の公共作品を手がけることになります。1936年のベルリンオリンピックでは、競技場入り口の門柱のデザインを担当し、芸術競技で銀メダルを獲得しました。彼の作品は、ナチスのプロパガンダに利用され、「現代における最重要のドイツの彫刻家」として称賛されました。

ブレーカーは、世界首都ゲルマニア計画における彫刻部門の責任者として、総統官邸や大凱旋門などを飾る彫刻の制作に携わりました。彼の作品は、ナチス体制の美学を反映したものであり、その力強い表現は、体制の象徴として利用されました。1944年には、国家的な彫刻家として徴兵を免除されるなど、ナチス政権下で特別な地位を与えられました。

戦後の活動と評価

1945年のナチス・ドイツ崩壊後、ブレーカーはナチスの同伴者として分類されましたが、西ドイツで創作活動を再開します。戦後も、肖像彫刻の分野で名声を博し、サルバドール・ダリなどの芸術家仲間から国際的な認知を受けました。しかし、ナチス時代との関わりは、彼の生涯に影を落とし続け、その芸術的評価は今日に至るまで議論の対象となっています。

ブレーカーの作品は、その芸術性とともに、ナチス体制との関わりという側面から、複雑な評価を受けています。彼の作品は、見る者に様々な感情を呼び起こし、歴史と芸術の関係について深く考えさせるきっかけを与えてくれます。

代表作

『党』(Die Partei): ナチス党の精神を象徴する彫像。総統官邸の車寄せに飾られた。
『国防軍』: 総統官邸の車寄せに飾られた彫像。
* ベルリンオリンピック競技場の門柱

まとめ

アルノ・ブレーカーは、20世紀の彫刻界において重要な存在であり、その作品は今日でも多くの人々に鑑賞されています。しかし、ナチス体制との関わりは、彼の評価を複雑なものにしています。ブレーカーの生涯と作品は、芸術と政治の関係について、私たちに問いかける存在と言えるでしょう。

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