アルバニアファシスト党

アルバニア・ファシスト党とその変遷

1939年、イタリア王国によるアルバニア侵攻後、アルバニアにはイタリアファシズムの影響を受けた政党、アルバニア・ファシスト党（PFSh）が誕生しました。これはイタリアの国家ファシスト党(PNF)をモデルとし、イタリア政府の支援を受けたアルバニア人政治家によって組織されました。

PFShは、PNFと同様の組織構造を持ち、民兵組織や青年組織なども擁していました。そのイデオロギーの中核にはアルバニア民族主義があり、「大アルバニア」の実現を目標に掲げ、ギリシャやセルビアへの敵対心を煽りました。また、イタリア帝国の拡大政策によってイピロスやコソボの一部がアルバニア領に編入されたことも、この民族主義的目標を後押ししました。

一方で、PFShは一定の反ユダヤ主義的傾向も示し、ユダヤ人の党員資格は認められず、教育など一部の職業からも排除されました。1940年3月時点での党員数は1万3500名と、決して大規模な組織ではありませんでしたが、イタリアによるアルバニア保護領下では事実上の支配政党としての地位を占めていました。

興味深いことに、後のアルバニア共産党の指導者となるエンヴェル・ホッジャは、PFShへの入党を拒否したため、教職を追われました。このエピソードは、ホッジャの反ファシズム的姿勢を示すものであり、後のアルバニアの歴史において重要な意味を持つ出来事と言えます。

1943年、枢軸国の敗色が濃くなる中、PFSh内部の共和主義的なナショナリスト、マリチ・ブシャティが保護領の首相に就任すると、PFShは「大アルバニア防衛」(Garda e Shqipërisë së Madhe)へと再編されました。これはイタリアからの独立を模索する動きであり、アルバニアの国旗にファシストのシンボルであるファスケスを追加するなど、アルバニアの自治拡大を主張する姿勢を示しました。

しかし、同年イタリアの休戦に伴いアルバニア保護領は消滅し、ドイツ軍が進駐。政治情勢は大きく変化しました。ナチス親衛隊情報部(SD)のエルンスト・カルテンブルンナーは、「大アルバニア防衛」をナチズムを掲げる「アルバニア・ナチ党」(Parti Naziste të Shqipërisë)へと再編しました。

ただし、ドイツによるアルバニア統治は他の占領地域と比べて比較的緩やかで、ユダヤ人迫害も大規模には行われませんでした。また、首相はアルバニア・ナチ党から選ばれるわけではなく、その影響力は限定的なものでした。

1944年以降、アルバニアでは共産パルチザンとの内戦が勃発し、アルバニア・ナチ党は共産勢力と激しい戦闘を繰り広げました。しかし、ドイツ軍の撤退と共にアルバニア・ナチ党は急速に力を失い、1944年末には事実上消滅しました。アルバニア人兵士から編成された第21SS武装山岳師団も、脱走兵の増加によりドイツ人兵士中心の部隊へと変化していきました。

アルバニア・ファシスト党とその変遷は、イタリアとドイツの占領下におけるアルバニアの複雑な政治状況、そして民族主義とファシズム、ナチズムの絡み合いを鮮やかに示しています。また、この党の興亡は、後のアルバニア共産党政権樹立にも大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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