アルビの司教都市

アルビの司教都市：中世の遺産が織りなす南フランスの宝石

フランス南西部、タルヌ県アルビ市に広がる「アルビの司教都市」は、ユネスコの世界遺産に登録された、中世の建造物群と美しい街並みが織りなす貴重な文化遺産です。アルビジョワ十字軍後、ローマ・カトリック教会の勢力拡大と共に発展したこの都市は、歴史的建造物と、タルヌ川沿いの景観が見事に調和した、独特の都市景観を形成しています。

歴史的建造物の宝庫

世界遺産の中心は、以下の歴史的建造物群と、それらが構成する都市景観です。

1. ベルビ宮殿

13世紀、アルビの司教ベルナール・ド・カスタネによって築かれたベルビ宮殿は、元々は司教をカタリ派や反乱勢力から守るための堅固な要塞でした。ドンジョン（主塔）や城壁、塔などを備え、タルヌ川を見下ろす絶好の場所に位置しています。後に邸宅として改築され、現在では、アルビ出身の画家アンリ・ド・トゥールーズ＝ロートレックの作品を収蔵するロートレック美術館として活用されています。

2. サント＝セシル大聖堂

13世紀から16世紀にかけて建造されたサント＝セシル大聖堂は、レンガ造りのゴシック建築の傑作です。その規模は、レンガ造りの聖堂としては世界最大級を誇り、壮麗な天井画「最後の審判」をはじめ、貴重な美術品を数多く収蔵しています。78メートルもの高さの鐘楼は、大聖堂のシンボル的存在です。

3. サン＝サルヴィ参事会聖堂

6世紀の初代アルビ司教、聖サルヴィを記念して建造されたサン＝サルヴィ参事会聖堂は、ロマネスク様式とゴシック様式が混在する独特の建築様式が特徴です。聖堂を取り囲む回廊やかつて参事会員の住居だった建物の残骸は、歴史の重みを感じさせます。

4. ポン・ヴィユー

1035年に建造されたポン・ヴィユー（古い橋）は、タルヌ川を渡る重要な橋であり、タルヌ川右岸のマドレーヌ地区の発展に大きく貢献しました。中世には要塞化され、跳ね橋の機構も備えていました。

タイセイと繁栄、そして美しい街並み

15～16世紀、アルビはタイセイ（大青）と呼ばれる染料の交易で栄え、多くの富豪が生まれました。彼らは、塔やイタリア風のロッジア（屋根付バルコニー）を備えた美しい邸宅を建造し、現在のアルビの街並みの基礎を築きました。リヴィエール邸、ゴルス邸、レネス邸などは、その代表的な例です。

街の至る所には、ルネサンス様式の木骨造の住宅が残り、中世からの歴史と、タイセイ交易で得られた富裕層の生活が垣間見える、美しい街並みを形成しています。ピュシュ・ベランギエ通りとクロワ・ブランシュ通りの角にあるヴィエイユ・アルビの家や、アンジャルベール宅などは、その典型的な例です。

世界遺産登録

アルビの司教都市は、1996年に世界遺産暫定リストに登録され、2010年に正式登録されました。中世の司教都市の特色、レンガを用いた南フランスのゴシック建築、そして歴史的建造物群と街並みの調和が評価され、世界遺産登録基準(iv)(v)を満たすとして認定されました。

まとめ

アルビの司教都市は、中世の歴史と文化、そして芸術が凝縮された貴重な遺産です。歴史的建造物と美しい街並みの調和は、訪れる人々に深い感動を与え、南フランスの文化遺産を代表する存在として、これからも多くの人々を魅了し続けるでしょう。

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