アルピコ交通上高地線

上高地線：北アルプスの玄関口を支えるローカル線

上高地線は、長野県松本市の松本駅から同市の新島々駅までを結ぶ、アルピコ交通が運営する鉄道路線です。東西方向に松本市西部地域を横断し、地元住民の通勤・通学の足として、また、北アルプス南部への観光や登山のためのアクセス手段として、重要な役割を担っています。

歴史：大正時代からの歩み

上高地線の歴史は、1921年（大正10年）に筑摩鉄道によって「島々線」として松本駅～新村駅間が開業したことに始まります。翌年には全線が島々駅まで開通し、1955年（昭和30年）に現在の「上高地線」と改称されました。

開業以来、地域住民の生活路線として利用されてきた上高地線ですが、戦後の登山ブームを背景に、国鉄からの直通列車も運行されるなど、観光路線としての役割も拡大しました。しかし、1983年（昭和58年）の台風10号による土砂災害で路線の一部が不通となり、その後廃止される区間もありました。

2007年（平成19年）には運営会社が経営危機に陥り、路線存続が危ぶまれましたが、松本市の支援を受けて老朽化した施設の更新が進み、現在に至っています。2011年（平成23年）にはアルピコ交通が発足し、鉄道とバス事業が統合されました。

運行状況：ローカル線の日常

上高地線は、おおむね30～40分間隔で運行されています。全列車が松本～新島々間を運行し、区間運転はありません。ただし、大学入試センター試験や松本ぼんぼん祭りなどの際には、臨時列車が運行されることもあります。

全列車各駅停車ですが、過去にはJRの夜行列車と接続する早朝臨時列車も運行されていました。2024年夏にはJR東日本の夜行臨時特急「アルプス」の運行に合わせ、再び早朝臨時列車が設定されています。

上高地線はワンマン運転で、無人駅では車内で整理券を取り、運賃箱に運賃を投入するシステムです。ICカードは利用できません。また、制限速度は区間によって異なり、カーブの多い区間は40km/h、カーブの少ない区間は50km/hとなっています。

サイクリングも楽しめる：サイクルトレイン

2022年3月からは、自転車を電車に持ち込める「サイクルトレイン」サービスが開始されました。予約が必要ですが、スマートフォンでWEB乗車券を購入できます。特定の時間帯と曜日、駅に限られますが、サイクリストに好評です。

その他の取り組み：快適な利用を促進

過去には、アテンダントが乗務する「あんしん電車」や、ガイドが沿線の見どころを案内する「観光案内電車」も運行されていました。2024年には、プロレス団体FREEDOMSとコラボした「プロレス電車」も運行され話題を呼びました。

利用状況：減少傾向からの回復

上高地線の利用客数は、1991年以降減少傾向でしたが、2005年頃から増加に転じています。しかし、旅客運賃収入は依然として減少傾向にあります。

施設：安全と快適性の両立

上高地線は、ATSやCTCなどの保安設備が導入され、安全性が確保されています。踏切の更新も進められており、電鐘式踏切はすべて電子音式に更新されました。架線はシンプルカテナリー方式で、コンクリート柱化工事が進められています。

まとめ：地域と観光を繋ぐ上高地線

上高地線は、地域住民の生活を支えるとともに、北アルプスへの観光客のアクセスを担う重要な役割を担うローカル線です。歴史と課題を乗り越え、現在も進化を続けています。今後の発展にも期待がかかります。

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